山岸凉子のマンガがすきなので、文庫本や新書判やコミックスや、
いろんな版形で買ってしまうわけだ。だって収録作品がみんなちがうし。
これは未読だった「千引きの石」と「ネジの叫び」が入っていたので、
「わたしの人形は~」も「汐の声」(かなり怖い)も読んでいたけど、買っちゃいましたよ。
「ネジの叫び」だけかなり前の作品で、1971年の「りぼん」に
掲載されたものです。「眠れる森の…」や「ラプンツェル ラプンツェル」の
とおなじタッチです。描線が太いのは水野英子さんとの対談でおっしゃっていた、
水野さんの太くてやわらかい描線に憧れて、という頃だったからでしょうか。
さて、「千引きの石」です。
最近気づいたのですが、山岸凉子の作品には転校生が多く、
それは函館ー小樽ー札幌と引っ越した自分の体験が反映しているのかもしれません。
転校生に限らず、自分だけがその場所にうまく嵌められないピースのような、
不安な気持ちを抱いている少年少女が多い気がします。
この主人公も転校生です。
1984年という時代を反映して、制服のセーラー服が間に合わなかったから、
という理由でマリン・ルックで登校したために、都会ぶっちゃって、と、
思わぬところで女生徒たちの反感を買っていたのでした。
マリン・ルック。
なんとこの私でさえ着ましたよ。当時は無人駅のド田舎で働いていたんですが。
ペパーミントグリーンだったなー。木綿100%だったのでもちろん2槽式の洗濯機でガラガラ洗ってました。
なつかしー。田舎だったけど、創刊されたばかりのASUKAはおもしろくて、
見逃さないようにしていたんだけどなあ。これは読んでいなかったんです。
転校生の彼女にだけ見えてしまう、異世界。
使われていないはずの旧体育館に、雨の日だけ、利用する生徒たちが
入っていくのが、
彼女にだけ見えてしまう。
彼女が旧体育館のことを口にするとみんな黙り込んでしまう。
唯一親しくしてくれた、神社を継ぐことになっている秀才の男の子と、
その友達で正反対のスポーツ万能でかっこいい外見と勉強は苦手でがさつな男の子が
ひとりで亡霊たちに連れ去られそうになっていた彼女を助けます。
旧体育館は、戦時中、町が空襲を受けた時に負傷した人たちが運び込まれた
場所でした。
旧体育館のこの死者たちごと炎に包まれて捻じれrながら浄化されている描写も、
山岸凉子にしか描けない世界であります。
「汐の声」の霊感少女(じつはインチキ)が誰にも信じてもらえず、
恐怖の中で息を引き取った結末に比べ、
こちらの女の子はナイト二人(そうか?)に助けられ、無事、
こちら側の世界に戻ってくることができました。
現実をしっかり見据え、霊感がまったくないタイプの友人が
いたおかげだということになっており、
「わたしの人形は~」の主人公のお母さんがまさにそのタイプで、
だからこそ、女の子の怨念を背負ったおそろしい人形の力をまったく
受けずに済んだのだと、霊能力の強い少年の口を通じて言わせています。
「日出処の天子」の反動でしょうか。
表紙のカラーを見たかったものです。