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この水色で四辺がさらに淡い水色の紙と、四辺が黒の赤い紙、

なんだと思われますか?


8/8に参加したヨコハマトリエンナーレ2014夜間特別鑑賞会の中でも印象にのこった
作品のひとつで、

撮影禁止ではあったのですが、

この作品を1枚ずつ持ち帰ることはできたのでした。

インスタレーションといわれる作品ですが、静かな印象を持ちました。

美術館の女性に、だんだん減っていくんですよね?補充なさるんですか?
とお聞きしたら、補充しているとのこと。

「多くのゴンザレス=トレスのインスタレーションは鑑賞者が作品の一部を持って行くことが出来る:あるシリーズでは展示スペースの角にある柱から蝋燭を持ちだすことができ、他のシリーズでは作品を構成する極薄のプラスチックシートやエディション無しのプリントを無料で持っていけるようになっていた。それらのインスタレーションの中には鑑賞者が持ち去った分を補充されることもあった。最も普及したゴンザレス=トレスに関する書物によると彼の作品は死の過程を作品のメタファー(電球が切れる、キャンディーの山が無くなっていく、など)としているされている。」

フェリックス・ゴンザレス=トレス(1957年11月26日‐1996年1月9日死去)」

キューバ生まれの視覚芸術家

国籍 アメリカ
専門 彫刻、インスタレーション

vフェリックス・ゴンザレス=トレス(Felix Gonzalez-Torres)
フェリックス・ゴンザレス=トレス(1957年11月26日生まれ、1996年1月9日死去)はキューバ生まれの視覚芸術家である。

国籍 アメリカ
専門 彫刻、インスタレーション

このヨコハマトリエンナーレ2014は章立ての1冊の本のように構成されているので、

この作品も自分のすきなように読むことを許されているはずだと仮定します。


静かな消滅、そんなことを思いました。

人は知らないところで、あるいは知っている人々に少しずつ自分という存在を分け与え、
それはまた補充されるが、いつか消えてしまう。

人は生まれた時から死に向かってあるきつづけている存在なので、
自分という書物のページを破りさりながら、誰かに手渡しながら、
そうやって自分という存在を消費していく。

会場の外に大量に捨てられていた自分の作品である紙を見ても、フェリックス・ゴンザレス=トレスは
腹も立てなかったというのも興味深く感じます。

(アーティスティックディレクターの森村泰昌さんの音声ガイドによる)


静かで哲学的な作品だと感じます。



もうひとつの作品は、鑑賞の前のミニ・レクチャーでキュレトリアルヘッドの天野太郎氏に、
このヨコハマトリエンナーレ2014で見逃してほしくない作品は?と
質問した時に教えてもらった、こちら。

ほかの作品たちより1段低い地下にあって、わかりにくいのですがぜひ見てほしい、
というので方向音痴な私はもちろん、美術館の方に聞いて向かいましたよ(笑)。

グレゴール・シュナイダー「ジャーマン・アンクスト」
ミクストメディア
協力 竹内化成株式会社 関西ペイント株式会社



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私が出てきた後、入っていく女性。

まさかこんなところに作品が、という感じの扉です。
だってふだん駐車場だし(笑)。



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中はかなり暗くて、ひんやり湿った空気が頬や足元を撫でていく感じ。





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暗い中に仄かに差す光をみると、

厳かな気持ちになりますが、この作品はそういう
感じでもないみたい。



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コンクリートの壁で覆われた密閉された部屋に残された泥の海。

照らし出された泥はぼこぼこ泡立っているようにも見える(見えるだけ?)。


ヨコハマトリエンナーレ2014のサブタイトルが、


ふたつの序章と11の挿話からなる「忘却の」の漂流譚




であることから、これも「忘却の海」のひとつなのだと解釈しました。

仄暗く、生理的な恐怖を感じながらも、



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この泥の海こそ、自分のなかにあるものなのではないか、と
考えて、


連想したのが中島みゆきの「ベッドルーム」でした。


誰にも見られていないベッドルームは
あなたにあなたが見えるベッドルームだ

あなたが鎧戸を固く閉めきる闇は
あなたがあなたの中の鎧戸を開け放ってしまう闇だ


タイトルの「ジャーマン・アンクスト」について調べてみたのですが、

ジャーマン・アングスト で「ドイツ人に特有の不安」、
(漢文でならった「杞憂」のようなことでしょうか)


という意味のようです。



この地下のひんやりした、灰色の重たい空気の中で、
泥を見ることで自分の中の泥の海やそれを照らすものがなになのか、

静かに見つめること、

自分の中の恐れに気づくこと、

そんなふうに受け取りました。

作者の名前がグレゴールなので、

どうしても、


「ある朝、グレゴール・ザムザは気がかりな夢から目覚めたとき…」

という有名な小説の書き出しを連想してしまうのですが、

どこかで呼応していないこともない、そんな気もします。