「美少女の美術史 浮世絵からポップカルチャー、現代美術にみる”少女”のかたち」 青森県立美術館
7月12日(土)~9月7日(日)



青森会場 出品リスト (会場では出してません。HPに掲載)


図録のセクションは青森会場の順番とはちがいますが、
打ち出した出品リストは、順路どおりでした。

うーん、こちらを打ち出してから見に行くのでした。
やっぱり計画が杜撰なんだろうなあ私。

美術展を見に行く人はもっとこう、計画や準備をちゃんとしているひとなのよ…


さて、「美少女の美術史」、小さい頃からうつくしい少女、お姫様や
アイドルや少女マンガのキャラクターが大好きでした。

少女、というより、童女の括りになってしまうから入らなかったと思うのですが、
喜一の塗り絵の少女もすきでしたねー。

さて、美少女を語る上で、あの吾妻ひでおさんとの共著もある、
新井素子の名言を忘れてはいけませんねー。

すべての少女は美少女である。


美人というものは客観性が入ってくるが、
美少女は主観的なものであって、誰もが美少女の要件を備えているはずだ、という。

美少女なんているわけないじゃない

という本展のフライヤーのコピーの裏バージョンとして、

すべての少女は美少女だ。

というのも重要だと思われます。


そんな美少女(ほんとうは美少女といういい方も自分の美学に反するのだ。
美しい少女、うつくしい少女と表記したいんである。美しいという字は、

「美」という字が一度ゲジゲジに見えてしまって以来、あまり積極的に
用いたくないのである)がすきな私ですが、

知らなかった美少女をこんなに紹介してくださって、ありがとうございます、
というのが本展への率直な気持です。

池田蕉園については、松園がすきなので、


「京都の上村松園とともに「東の蕉園、西の松園」「閨秀画家の双璧」「東西画壇の華」とされた他、のちには大阪の島成園を加えて「三都三園」と呼ばれたりもした。」

というのをどこかで読んで、

そのふたりの「園」の絵もみたいなーと思っていたんです。

島成園についてはテレビで紹介されているのを見たことがあって、松園のような凛とした空気はないけれど、物語のある華やかな絵だなあと思って。

今回の「美少女の美術史」青森会場 後期展示では成園の絵も見られるので大いに楽しみです。

で、池田蕉園ですよ。

ぼうっと煙るような目元が抒情的ですてきです。
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「楽しんじゃおう!」のセクションでは、橋本花乃の「七夕」の屏風絵も
よかったですが、

この「春流」の少女もよかった。

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山種美術館「クールな男とおしゃれな女」でバーンとお目見えしていた、

池田輝方の「夕立」。大きな図録があればほしかったのですが…。

浅葱色の着流しでラフにつったって外の雨を気にしている若い男の
表情が蕉園の少女と似たものがあります。



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いろんな美少女を紹介してくれてありがとう、

という意味では外光派の美少女(少女なのか女なのか微妙ですが)たちも
そうです。

当時の流行なのか、それとも黒田清輝の


「湖畔」を先に知っているせいでそうみえてしまうのか、

みんな縞の着物だなあ…。

(清輝先生の絵は本展には出ません)




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こちらの寝転がって新聞を読む少女の肌のタッチや色の選び方は
まさしく「紫派」。

萬鉄五郎の美学校時代の裸婦像を思い出したりします。


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そしてこちらは、ん?明治バルチュス?

と思ってしまったのですが、やはり担当学芸員の方がそういう
意図で展示したみたいです。

図録の解説に

「霜鳥之彦と官展少女室内画 わだばバルチュスになる!」

(「わだばゴッホになる!」は青森出身の版画家棟方志功の名言であり、
自伝のタイトル)

という小見出しがあって、思わず膝を打ってしまいました。


「少女をめぐる3つのエッセイ」の中の、「江戸の室内風俗図から明治の外光派
少女風俗画へー少女洋画史への試み」(村上敬 静岡県立美術館)で、


外光派少女風俗画の先祖は江戸絵画、という流れに、

さらに洋画少女が現代美術につながっていく大きな流れという
研究の方向が楽しみです。


横浜美術館の「はじまりは国芳」では、浮世絵から明治の美人画(鏑木清方、伊東深水など)へ、
昭和の少女マンガや挿絵の美少女の系譜につながる流れを見せてもらったのですが、

洋画少女たちもその流れにやってくるのなら、絵の中の少女たちはずいぶん多く、頼もしくなる気がします。


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小館善四郎 「おべんきょう」


こちらの絵は青森県立美術館ならではの出品だなあと思ったのですが、
(所蔵も青森県立美術館)、

描いているのは太宰治の従弟であり、

描かれているのは、太宰の姉と画家の兄との間の娘。

つまり太宰のお姉さんはいとこ同士の結婚をしたのですね。


描かれた少女の口元のきゅっとした表情や、緑色のブラウスや、
貝殻の内側の虹色が、少女が拡げているノートにしてはちょっと横長すぎる
用紙に反射しているようです。


太宰治の「女生徒」(アニメ)と連動した出品ということでしょうが、
太宰の従弟が画家だったということもはじめて知りました。