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きのう、盛岡に帰ってから見に行った劇団ゼミナール、25周年記念のお芝居のパンフレット。

あるつぶれかけの(なにしろ家賃滞納が毎月だ)でもコーヒーは
ものすごく旨い小さなまちの喫茶店が舞台で、

50代の「モテキ」を自称するマスターと、40代のウェイター、
毎月恋をして失恋して喫茶店にやってくる常連客(失恋公務員)、
家賃の取り立てにやってくる、大家さん、のいつもの日常組と、


モテキ・マスターのお相手の3人の女性たち(北川、水原、真木という
どこかで聞いたような名前の3人だが、じつは悲劇的な共通点が…)、

喫茶店にやってきて思いっきり「アベックスカワトクアヴェニュー」への
出店とその展開をぶちあげるアパレル会社専務と、
デザイナー(じつはウェイターの昔からの知り合い)
「アベックスカワトクアベニュー」のバイヤー、


スターな男(思いっきりフリルの白いシャツブラウスに白の三つ揃い…)
アシスタント(浴衣のまち○○をアピールしつつ、頭にどうみても、
「メロポンだし!」的な何かがついている…)


謎の少女(幼いファッションと痛いしゃべり方で、パパを探しているという。
のちに誰の娘かが判明する…)

という総勢14人のお芝居。

公演が終わってから役者さんたちが一列にならんで舞台の端から端までになったとき、
いわてアートサポートセンター風のスタジオでこんなに出演者が多いお芝居をみたのは
はじめてかも…と思いました。

すでにセンターの閉館が迫っていて、というコメントがあって、え!そんなに?
と思ったのですが、

19:45~21:20くらいの上演だったと思います。
表に出たら、21:30だったから…。約1時間半!

でも全然長いと思わなかったなあ。


うっかり盛岡劇場に行って、おかしいなあとは思ったんだけど、
(立て看板も受付もいなかったから)

タウンホールの扉をあけて、ビックリしておもむろにチケットを取り出して、
あ…いわてアートサポートセンター…。そこからは全力疾走。
疲れていたと思ったけど、ワタシ、まだまだ元気じゃん、と自分に感動しつつ
いわてアートサポートセンターの階段を踏み鳴らしてどどどどどどっと。


たぶん5分遅れて入ったと思うのですが、受付の方の気遣いで、
パイプ椅子を出してもらって(場内満員)入口寄りとはいえ、
前から1列2列で見ることができました。

舞台にはスクリーンがあり、そこには劇団ゼミナールの役者さんたちが
モノクロームで撮影されたものが上映中でした。

よかったー。

やがてスクリーンの上演が終わり、喫茶店のものがたりが始まる…。

最初に舞台に現れたのは、ウェイター。
パンフレットを見る余裕もなかったので、

私には「謎のピアノマン」でした。



思い入れたっぷりの身振りで、ピアノを弾いています。
そこへ、

パパァ?パ
パはどこ?

と幼い女の子ようなファッションと舌ったらずな話し方の、女の子が飛び込んできました。

あ、この子はピアノマンの娘なのかな?と思ったのですが、どうやら、
お父さんがここに来ると母親から聞いてきたらしい。

複雑な家庭の事情があるのか、
それとも不思議ちゃんなだけなのか、

風のように去った彼女が遺した言葉は、


アイウイールビーバンク。銀行になるのか(笑)。


やがてエプロンをしめた男がウェイターで、
憎めない雰囲気を漂わせて入るけど、
どうも頼りないマスターとふたりでやっている喫茶店であることが
分かってくる…。

中村章義さんが演じているマスターは、グレーの髪が渦巻いてふわふわしている、
雰囲気が昔の森本レオっぽい感じ。

いまモテキなんだ、ということをうれしそうに語るマスターなのですが、
家賃は滞納…。おいおい。

このマスターとウェイターの関係も長いらしいのですが、
じつはマスターが元イトーヨーカドーの社員で、セブンイレブンの
テイクアウトのコーヒーを提案したのは自分で、と言い出したりする。

話し方が、演技くさくなくて、ほんとうにこういうしゃべり方をするおじさんって
いるよなあ、というナチュラルなセリフだった。まえにもおなじ役者さんのちがう
舞台を見ているので、あー、役者さんだなあと。

このリアリティはあるが責任感とお金のないマスターに比べて、
ウェイターは雇われているはずなのになぜか、毎月家賃を肩代わりしてお金があり
(その謎はやがて明かされる)、この店をどうやって立て直すかを真面目に考えている…。

のですが、なにか地に足がついていない感じがまんまん(笑)。


いつもやってくる失恋公務員と大家さんの、いわばメイン4人の前に、
華やかなパレードが3組やってきて通りすぎていく。


パレード、というのは淡々とした喫茶店の風景を
ガラッと変える2つのエピソードの比喩でして、ほんとうにパレードが
きたわけじゃないんですが、

ひとつは喫茶店で打ち合わせをしようと入ってきた3人組。
アベックスカワトクアベニューのバイヤーが、地元出身のデザイナーという
縁で仙台でも福岡でも札幌でもなく、この盛岡に出店してくれるという
アパレルメーカー専務(いかにもな尊大な感じで笑ってしまう)とデザイナーの
3人でうちあわせをするわけですが、

100坪の売り場に10人のスタッフ(昔はハウスマヌカンという言葉が流行ったけど、
いまならなんというのがオシャレなのか)を置いて、とぶちあげるぶちあげる。
デザイナーも地元ですから、それに乗って盛り上げ、腰は低いが冷静なバイヤーが
いやいやいやいや、と、押しとどめ、けっきょくなにも形にならないまま、

ただの盛り上がりだけで終わる会話なのですが、カウンターの方にいつもの4人、
舞台の中央あたりのテーブルで3人のぶち上げ会議、という対比がおかしかった。

つぎにやってきたのは、

人気番組の通販、スターな男(芸名?)とアシスタントが繰り広げる、
こんなものがあってはいかんだろう、という商品の宣伝がおかしい!

しかも観客にむけて、一緒に「お茶の子さいさい!」という声とふりを指導したり、
なぜか和音をやらせたり。でもお客さんもみんな催眠術にかかったかのように、
スターな男 のいうことを聞いてしまう。

アシスタントは浴衣を着て、長身のきれいなお姉さんなんだが、素にもどって無表情になったり、
初々しい笑顔になったりの落差がはげしくて笑った。最後に宇宙人までやっつけられるスプレー
というセールストークに驚き逃げ出してしまう…頭に「メロポンだし!」がついてたし!



最後のパレードはマスターの幻想のモテキとその現実(笑)。
三人の女性たちがマスターをそれぞれ訪ねてきては、色仕掛けで生命保険の
書類に署名捺印させようと。

お芝居でよくある、繰り返しの可笑しさもあるのですが、最後の北川(八木絵里)に
いたってはもう契約ができていた上に、失恋公務員の現在の恋人…だと思っていたらやっぱり
契約目当てのつきあいだった(笑)。

厳しい現実を突きつけ、男二人を地獄に落として立ち去る北川さん。ひどすぎる(笑)。

この場面で思いっきりドラマティックに演奏するウェイターと、
みんな爆笑してはいたけど、歌声がひびくマスター、

失恋と裏切りのショックで石像と化して、口を開けたまま、
眼から涙を流す失恋公務員、

の3人が凄かった。

ウェイターのピアノが下手でつっかえたり、
マスターの歌が調子っぱずれだったり声量がなかったり、
テレがあったりしたら、気持ちよく爆笑できなかった。

そして石のように固まったまま、目から涙を噴出させるという
すごい演技がまた可笑しかった!

華やかな(?)客たちが通りすぎていったあと、謎の少女のパパが
スターな男だと分かったり、スターな男とマスターが元イトーヨーカドーの
社員同士だったと分かったり、

謎の綻びは繕われ、もとの日常に帰っていく。

マスターとウェイターはやってきた25年に思いをいたし、
またこれからもよろしく、と言葉をかけあう…



まるで一杯のコーヒーを飲んだような、

高揚感と華やぎと、和む気持ちと、スッキリした感じ…。

終わった後の役者さんたちの挨拶と、25周年記念でつくった
グッズ販売のお知らせまでフルに楽しんだ舞台でした。



「HAVE A BREAK」

作演出 斎藤英樹
出演 マスター 中村章義
ウェイター 斎藤英樹
失恋公務員 菅原康幸
大家 横山さん 河村 睦
マスターのモテキ?3人の女たち
     北川 八木絵里
     水原 芦澤志帆子
     真木 中條 菜緒

     服飾デザイナー 石川恵 
     アパレル会社専務 丸山 安曇
     百貨店バイヤー 菊池潤
     
     謎の少女 小田島 風美

    スターな男 西 恭一
アシスタント 川島 英恵

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25周年記念で、来場のお客様にプレゼントがあります、
ということで、「謎の少女」役の女優さん、小田島さんから手渡しで
いただいたガム。え!オリジナルにできちゃうものなの?




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裏面は一個ずつ違うみたいで、私のはウェイターとマスター☆
やっぱりマスター役の中村章義さんの顔がマスター役の時と全然
ちがう雰囲気で、そこが萌えポイントです☆

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こちらはこのお芝居にあわせて、「六月の鹿 自家焙煎珈琲」のお店で
ブレンドした、「二人の部屋ブレンド」100g600円(税込)。

受注販売の劇団ゼミナール25周年記念コラボTシャツ2500円もありました。



私はなにしろセンターが閉館してしまうので、路上販売になりますが、
というのが気に入って、「二人の部屋ブレンド」を購入しました。

この喫茶店では、ちいさい喫茶店で、カウンターの中にいるマスターと
ウェイターの距離が1メートルなくても、

「ふたブレワン!」とカウンターの常連、失恋公務員の青年を
怯えさせる勢いでマスターとウェイターが声を掛け合うんです。

このコーヒーを淹れるときはひとりで、

「ふたブレワン!」と腹の底から声を出してみようかな。