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「明治の細密工芸 驚異の超絶技巧!」 山下裕二監修




「超絶技巧!明治工芸の粋」展に際して出版された別冊太陽
ですが、

図録も「超絶技巧美術館」(美術手帖)も持っていたのですが、
こちらは明治工芸についての解説がわかりやすく、丁寧だったので。


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山田宗美(1871-1916) 鉄打出鳩置物 明治42(1909) 高さ35.2㎝ 鉄
石川県立美術館象

こちらは鳩の頭から瓦の先まで一枚の板でつくられているそうです。

ふつは瓦と鳩は別々に作り、鳩の脚をほぞで固定するかロー付けしてしまう
そうですが…。



鳩の脚の狭い空間から体を大きく打ち出す技法は今も解明できていないそうです。




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「超絶技巧!明治工芸の粋」展の目玉のひとつ、
正阿弥勝義による、「古瓦鳩香炉」、

こちらは鉄でつくられた瓦のこの窶し具合も、銀色の鳩が狙っている
蜘蛛の脚に至るまで、まさしく超絶技巧なのですが、

正阿弥勝義は天保2年(1831)~明治41年(1908)ですから、

山田宗美の作品は正阿弥勝義にインスパイアされたものでしょうか。
それとも両作品の前にもこういう形のものがあったのでしょうか。

山田宗美についての解説が
「明治の細密工芸 驚異の超絶技巧!」にあり、

彼の作品の特徴は一つの鉄塊を打ちのばし、鎚起(ついき)、絞りの
技法だけを用い、鑞付や溶接などを一切使用しなかったことだそうです。

東京美術学校の教官への招聘もあったそうですが、病に斃れ、44歳の若さで
没したと。弟子がいたそうですが、その後この技術は受け継がれず、
解明できない技術の謎が残ったというわけです。


正阿弥勝義の古瓦の窶し方など、南部鉄器の鈴木盛久13代目の茶釜の
窶し方を重ね合わせたり、現代の作家ですが、前原冬樹の作品にも
繋がっているように思えます。

工芸作品は見れば見るほどその技術について知りたくなり、
知るにつれて見方が丁寧になっていく気がします。


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とかいいつつ、雑な撮り方ですみません。
雑誌を拡げて撮るのってむずかしいですよね。


安藤緑山による牙彫作品の竹の子ですが、

あのピンクの小さな突起部分が、どうしても母猫の乳頭に見えて仕方が
ないのですよ。この竹の子は皮が破れてそこからこのピンクの根が生き物のように
顔をのぞかせているのですが、

非常にイキイキとしてエロティックな竹の子だなあと思います。

竹の子の皮の触るとしっとりしつつもざわざわした感じもよくあらわされているのですが、
2回目に見た時は梅の葉の薄さに唖然としましたね。

これも牙彫ですから、彫ったわけですよね。どうやってこんなに薄く、しかもひねりまで入れて
彫ったんでしょう?

2度目は飽きてさらっと見るのかと思ったら、ますます疑問がつのり、かえってじっくりみてしまった
気がします。





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こちらの伊勢海老は高瀬好山の自在置物ものですが、

「超絶技巧!明治工芸の粋」展のトップバッターに出ていた

山崎南海の「自在海老」と無銘の彩色のされていない「伊勢海老」。

高瀬好山の伊勢海老は両者の細密さと彩色の丁寧さをハイブリッドに
したような。

ちなみに個人蔵です。

超絶技巧の工芸品への興味をかきたててくれる本だと思います。





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また、これですよこれ!


私は蜻蛉モチーフの工芸品がすきなのですが、
これは小さい作品ながら、蜻蛉の翅がうつくしくてすきだったのですが、

裏があったのね。

残念だわ。展覧会では裏を見せてくれている作品もあったんだけど、
表と裏、一度に両方を見せることはむずかしいもんね。

鏡を遣ったり、いろんな展示の工夫をして見せている作品もあったので、
これも裏までみせてほしかったなー。と思いながら、だからこの別冊太陽、
買って正解だったんだって!と自分にいいきかせたりする。

これも正阿弥勝義の「銀製蜻蛉香合」なんですが、直径8cm。

裏面の水紋に映った蜻蛉のシルエットのうつしさ。心憎い。


蜻蛉は勝ち虫といって、武家に好まれた意匠ですが、
松平家お抱えの刀剣金工師八代中川勝継の三男という
出自を考えると、また蜻蛉の意味合いが変わって見える気がします。

勝義は18歳で備前藩の正阿弥家を継ぎ、正阿弥勝義になります。

備前と言えば、


ヱヴァンゲリヲンと刀展 で備前刀のパネルもあって、刀の名産地(というのもおかしいが)
だと覚えたのですが、ヱヴァンゲリヲンと明治の超絶技巧をなぜここでつなげるし。

いや、つながると思うんですけど。

ちなみに、「ヱヴァンゲリヲンと刀展」パリまで巡回したもよう。すごいなあ。



明治9年の廃刀令により刀装具の需要がなくなるとその
技法を用いて多彩な置物や花瓶などを制作して高く評価されたそうです。





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今回の「超絶技巧!明治工芸の粋」展にも出品されていた
安藤緑山のパイナップルとバナナですが、

清水三年坂美術館の館長・村田理如氏さんと山下裕二さんの
対談ページも別冊太陽に掲載されており、

このパイナップルとバナナは対談当時、手に入れたばかりだった
そうです。

奥付を見ると、出版が2014年4月25日ですから、ほんとうに
手に入れてまもない貴重なコレクションだと思われます。

それを惜しげもなく展示してくれてありがとう!と別冊太陽に
向かって叫んでも(笑)。

京都の清水三年坂美術館、神戸マラソン2014のついでに
行けたらいいのですけれど。幸いというべきか、京都・大阪・奈良の
美術展は神戸マラソンの頃は展示替えのお休み中か、すでに
見たことのある美術展の巡回展ばかりだったのですよ。幸いってなにが(笑)。


この記事を書いている途中で眠くなり、眠って起きたらすっかり風邪はふっとんでおりました。


きょうから岩手県立美術館の常設展示2期がはじまるので、
先日レクチャーのあった資料を片手にさっそく行ってきますかな!