さて、四谷シモンのギャラリートークについてです。
(きょう出かけるところまで1時間ですが、8時に出れば余裕でしょう、と油断中)
壇上、と言っても、アトリエ再現コーナーのステージですから、30cmくらいの低さで、パイプ椅子は50脚ほどだったかしら。100人は越える人たちがシモンに集中していました。
(大抵はさん付けですが、シモンさんというのもな)
司会の女性が一昔前のキャリアウーマンのようなキビキビした感じだったので、シモンの春の陽だまりのような語り口が対照で際立ちます(笑)。
スクリーンにまず映し出されたのは、ハンス・ヴェルメールの関節人形。
仕事柄家を留守にしがちな両親でかつ転校の多い子供時代だったため、小学校4年でもう勉強はしない、
とテストは白紙ばっかりで学校にもあまり行かなかった、と。
人形づくりはそんな子どもの頃から続けていたけれど、20、21歳のある日、雑誌でヴェルメールの関節人形を見て衝撃を受ける。書いていたのは澁澤龍彦だった。
いままでの人形をすべて捨てて、アンティークの人形を参考にして独学で関節人形を作り始める。
作り方は、紙を水に含ませ糊と混ぜ合わせ、雌型を作って木工のひとに型を頼み、石膏を貼り合わせ、表面を磨き色を塗るという手のかかるものだった。
「未来と過去のイヴ」
(実際は5体が壁を背にこちらを睥睨するかのように並んでいます。本からの画像なので…)
小学校もあまり行かなかったから、白紙で染み込みやすかったんでしょうね、と澁澤龍彦からの影響を大いに受け、またその支えについても。
第一回個展風景の写真がスクリーンに。
この時個展への賛を澁澤さんに頼んで書いてもらい、また背水の陣の個展は大成功で出品した12体すべてが売れたそうです。
機械仕掛の少年 1
実際に会場で見ると、歯車やネジなどの機械(機械とは本来、ネジ、歯車、テコなど動力を伝える部品のことです)が重量感も感じさせて、人形に痛々しさを感じるのですが、本の写真では機械の部分が暗くなっていて残念。
機械仕掛の人形たちを作る中で、実際の動くものを作りたいと思い、動くことに手が届いた 3台が少年たち。
しかし動くけど動かすとやはり故障してしまい、現在動いていた時の動画などもないそうです。
1980 制作中の機械仕掛の少年1をみる澁澤龍彦の写真が映し出されます。
天使ー澁澤龍彦に捧ぐ 1988
(会場内では唯一高く吊り下げられており、横から見ると弓なりにしなっている)
ここで1987年の澁澤龍彦の死によって、何も手に付かなくなり、
螺旋状にぐるぐる落ちていくような時代があったことを語って、
年に一回は展覧会を開かなくてはならないので、それで救われたと。
人形教室は37年目になるそうです。
生徒さんたちが作る人形は、素材などはおなじなのに当人になってしまう。
人形を作ることと自己愛は切り離せない。
ピグマリオニスム ナルシズム
この人形も会場に展示されており、木枠と機械の内蔵と、何かを求め探そうとしているようなひたむきなまなざしが印象的です。
ここで、進行の女性にむけて語るかたちで彼女を装置にしてじつは会場のお客さん、そして自分自身に語りかけるのだな、と感じました。
ドリームドール 最新作
おなかにボールを入れたため、柔らかみが出ると話し、塗装はせず磨きをかけただけで、いちばんこれがかわいいかな、と語り、40分ほどのギャラリートークは終了しました。
あまり若い方はいなくて、私と同世代かさらに年上の方も多かったです。女性が多いのですが、男性も意外に多かったです。
ロリータファッションの若い女性もちらほらといましたが、案外多くはなく、とんがったファッションのひともあまりいなかったなあ。
真面目な雰囲気の人が多かった気がします。
サインをいただいた時のかわいい笑顔がよかったなー。
サインをいただいた本を読んだら、シモンは「お人形はかわいいが一番」と語っているそうです。人間もかわいいが一番だなあと思います。
長文を読んでくださってありがとうございました。