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ミネオラオレンジとコーヒーで、体と脳みそを起きさせているところ。

三十数年前は

温州蜜柑にインスタントコーヒー

で「悲しみよ、こんにちは」ごっこをしていたのになあ。

私の年頃の、田舎(盛岡ではない。盛岡は都会だ)で育った人にはありがちの、

十代といまとの大きな変化は食材が豊かになったことですなあ。

歌人の穂村弘さんが、赤城のアイスからハーゲンダッツのアイスクリームまで、幅ひろい食の記憶を持っている自分の方が、

生まれた時からサーティワンもハーゲンダッツも当たり前の若者より、豊かだともちろん負け惜しみの美学をふるふる滲ませて書いていたのを思い出す。

ふっ。

チーズケーキの材料に「サワークリーム」が出てきたらお手上げだったなー。いまだったら、コーヒーフィルターで水切りしたもので代用しちゃうけど、

サワークリームがどんなものかさえわからないしね。

まー、食の記憶が豊かかどうかは謎ですが、南部鉄器のすき焼き鍋でクッキーを焼いたり、

高輪プリンスホテルのオレンジケーキ(愛用のレシピ本にあったので、高輪プリンスホテルなんて48歳までどんなところか知らない)を、オレンジのフレッシュジュースのかわりに温州蜜柑を搾って作ったり、

滑稽でいじましい記憶だけは山のようにあるなー。

思えば遠くきたもんだ。

食もだし、美術もだな。マンガ家になりたいという野望は中学で挫折(美術がずっと2だったので)しましたが、

高校にあった大きな美術全集で絵を見るのがすきだった。実物を見るなんて一生ないと思っていたので、所蔵なんて気にしたことがなかったし、

美術展を見るより、そのお金で美術全集を買った方が何回も見られて得だ、

と本気で信じていた。コンサートもしかり。

きっかけは映画かなー。後に残らないものだけど、忘れられないシーンや音楽は残る。

ハタチで映画をはじめて見ましたよ(学校で見た以外では)。田舎育ちだからというより、家庭環境の問題ですけど。

映画のナマに目覚めてから、テープで満足していた自分がコンサートに出かけて、

美術全集から美術展へと、ステップアップしたわけだ。

高校時代は別役実の戯曲集を愛読していましたが、そこからナマ(お芝居)を見るようになるのも長かった。

しかし、

なんでも幅が広い方が、

人間としての味わい

が深くなるかもしれない。

何にでも興味をもって、つまらないこともおもしろがると少なくないひとに感心されたり、呆れられたりしてきましたが、

ひとえにこの振り幅の大きい人生ゆえでございます。

今後もさらに振り幅が大きくなるのかしら?

楽しみであります。