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いわてアートサポートセンター風のスタジオにて、


2回目の2/22 夜の公演を見てきました☆



2/6の記事を読み返したら、2月はお芝居と落語が怒涛のようにあって、

楽しみだ的なことが書いてあるのですが、


その頃の元気が懐かしいよ。インフルエンザと父の介護関係で、

いろいろ消耗し外出できず、


きのうの「モナリザの左目」も、最初は疲れているからどうしようかなあと

思ったのですが、


きょうの3回目は、盛岡劇場でやるそばや寄席(柳谷小三治師匠とゆかいな仲間)と

ぶつかるしー、ってことで!


がんばって家を出てパーキングについたところで、ない!ないないお財布がない!


私はちょっと改心して、2月の寅の日から春財布を下ろしたのですが、

(雪で夜で春の寅の日に下ろしたのでバッチリだ)


ピンクの長財布には一万円札、銀色の長財布には一万円札を崩したお札、

がま口には小銭、


ということにして、お財布をぱんぱんにしない努力を払っております。

前はなんでもかんでも詰め込んでぱんぱんにして、廃れさせてしまっていたのですが、


今度はきれいに大事に使おうと思ってね。


ところがそのピンクの長財布が見当たらないのよー。

いちばん中に入ったお金が大きい財布なのでドキドキする。


クレジットカードはもう厳選して1枚、それも銀の財布にSuicagビューカードを

入れているだけで、免許証も生協のポイントカードも銀色の財布なんだけど、


でも愛着ってものもあるからね。ど、どうしよう。


と、パニックになってしまうと見つからないもので、手提げに入っていました。

ちなみにダ・ヴィンチのほつれ髪の女の手提げでした。たまたまだけど。



そんなこんなで、お芝居には10分くらい遅れて入ったのですが、

登場人物が少なく、物語も少し見ていれば人間関係もいまどういう状況なのかも

自然と掴めます。



ある新婚の夫婦がいて、夫が飲み屋でケータイを忘れたことから知り合った

ある男を呑んだ勢いで家に誘い、その男がそこで紹介された妻に懸想して、


やがて妻の勤め先にまで現れるようになり、精神のバランスを崩した妻のために、

夫は男にもう現れないでくれ、と強く言い、そうしているうちに口論からもみ合いとなり、


ナイフが男の命を奪ってしまった、


というのが事件の概要で、男は弁護士に事件について語っているところでした。


その後弁護士の雇った探偵によって、殺された男の弟が登場。


男と弟の再会場面から、殺害された男は過去に重罪を犯し、

あの夫婦と出会ったのは刑務所から出てきてまもない頃だったことが

わかります。


弟と兄は年齢が離れており、兄は刑務所に入る前にはこんなに小さかった

お前が、大きくなったなあ、と懐かしげですが、


若い弟はそれだけに兄への許せない気持ちがまずあり、この再会の場面では

兄の罪は明かされないまま、それによって弟が母親とふたり、苦労を重ねたこと

などが語られます。オレンジ色のつなぎを着た弟は、自動車工場か機械工場勤務のようです。


兄を拒絶した弟は、思い返して、兄に出所祝いをしてやるから、夕方またここに来い、

と言って工場に戻ります。


兄の犯した犯罪は放火でした。


恋人に裏切られた腹いせに、彼女の住むアパートに火をつけたところ、

火によって焼け死んだのは、まったく関係ない5歳の女の子でした。


重罪にも関わらず刑期は十年。当時大量のアルコールによって、心神耗弱状態にあった

とされたためです。


弁護士がやとった探偵が思わぬものを拾ってきます。



刑務所から出てきた男と、ストーカーされていた夫婦の妻の方の

接点です。


妻は、以前は「恵子」という名前で、あの焼死した5歳の女の子の母親でした。


ここから夫の罪状が「傷害致死」なのか「殺人罪」なのか、にわかに

きな臭くなってきます。


夫は妻の復讐を肩代わりしたのではないか。だとしたら殺意が最初からあったことになり、

「殺人罪」に問われるのではないか。


弁護士と容疑者である夫との面談(でいいのか)で、夫につめよる弁護士。



セットはシンプルで、壁紙がポスターのモナリザのジグソーを拡大した模様になっていて、

全体に照明を落とし、印象的な下手から上手に斜めに大きく差し込むライトと音楽が、

舞台によくあっていました。


夫の妻、「めぐみ」は最初、夫が連れてきた男に会った時、男になにかいぶかしげなものを

感じているような視線を送るのですが、


また男も妻に、なにかを思い出したような視線を送るのですが、


ふたりの再会はまったくの偶然ではなかったことがやがて、

明かされていきます。


妻は男の弟がこの町に住んでいることを突き止め、

この町にやってきたのでした。



途中、もしかしたら夫は妻の復讐の道具にすぎないのでは、

と思ったのですが、夫はそれについて気づいていたのでしょうか。



あの男の殺害現場の再現シーンでは、最初はその場にいたのは

夫と男だけでした。


妻につきまとうな、という夫に、それはできない、と拒絶する男。

もみあううちにナイフが男に突き刺さり。



しかし、物語の終わりでは、男に刃を向けるのは妻でした。



男も、放火という重罪を背負って、深く悔い改め、

自分が結果的に焼死させてしまった女の子の墓参を願い、

心から謝りたいために妻につきまとっていた、



のではなく、


あの自分が子どもの命を奪い、苦しめた妻を、

自分のものにしたいからつきまとっているのだ、


という告白。


なにを考えているのかわからない、ぬーぼーとした雰囲気の

(それはムショがえりだからまだ諸事に不慣れだから、とも

とれたのですが)

男の中には暗い情欲の炎が燃えていたんですね。


どうして!

自分が殺した子どもの母親でしょ!


という常識が通じない、恐るべき深い暗い穴をもつ男。



やがて最後に判決が下される。


夫の罪状は、


「傷害致死」


十一年前の事件で、あの男が心神耗弱状態にあったとされ、

状況酌量で刑期を10年と短くされたことと、


釣り合いが取れる判決になりました。


このラストシーンの夫の表情を浮かびあがらせる、


その顔を照らす右から左へ斜めに落ちるライト、

讃美歌のような荘厳な音楽、


そして夫の、不思議な微笑。



モナリザの微笑の意味するものもいまだに謎とされていますが、


この夫の微笑も、勝利なのか、愛する妻を守ったことに対する安堵なのか、

妻は自分を道具にしていただけだと知っての自嘲なのか、


心神耗弱などという理由をつけてあの男を10年でまた娑婆に送り出した法の網の目に

対する嘲笑なのか、


自分の人生に対する冷笑なのか、


緊張から解放された安堵なのか、


しかしどれでもいいし、どれでなくてもいい。


あの最後の場面の微笑が決まった瞬間、

この舞台のジグソーがピタッと完成された、


そんなふうに感じました☆