この本も何度となくよ見返していた気がするのですが、
今回はじめて見返しの家族写真の裏にこんなメッセージが描かれていたことに気づきました。
怠け者になりなさい、
と並ぶ、
味わいのあるお言葉、そして味のある絵ではないでしょうか。
本書には、ゲゲゲの姉妹、尚子さんと悦子さんの「水木家の秘密」もあり、
水木先生の眠りに対する真摯なキモチと、何が何でも子供は早起き!という奥さんの姿がセキララに語られていておかしかった。
「ゲゲゲの女房」では、夫・水木しげるを信じてついていく良妻賢母(でも夫と一緒に艦隊のプラモデルに熱中というのが意外でしたが)の面が目立ちましたが、
姉妹の目から見たお母さんは起きなければ水をぶっかけたり、階段から引きずりおろしてでも遅刻許すまじのお母さんでした。
そうかと思えば好物の柿を水木先生と食べに食べ、毎回お腹を壊すとか、
やっぱり人は角度によって変わりますね。
二人が両親をすきで、尊敬しているのが伝わってくる、楽しい対談です。
この「悪魔くん」を描いた頃が、先生にとっていちばん苦しかった
時代ではないでしょうか。
貧乏神に取りつかれ、税務署は収入を隠しているんじゃないかと来るくらい。
人がこんな少ない収入で生活できるわけがない、というのが査察の理由ですが、
「あんたらに自分たちの生活がわかってたまるかい!」
と追い払った水木先生。手には質屋の札がごっそり握られている…
それは「ゲゲゲの家計簿」で読んだのですが、たぶん、
映画やドラマの「ゲゲゲの女房」でご覧になった方も多いのでは。
(外せない名場面だと思うのですが)
その貧乏の中で、長女誕生。12月24日。手のかからない大人しい子
だったらしいですが、それにしても当時は人口ミルク推奨の時代ですから、
ミルク代がかかるわけだ。高木ブーさんがドリフターズに入るときも、
いかりやさんとギャラの相談で、うちはミルク代がかかるんだよねえ、
と控えめにアップを仄めかしたそうだけど、ミルクからいまは母乳(のみ)育児が
勧められているんでしょ。極端だっつーの。やりたいようにやらせろと思う。
まさしく貧乏のどん底で、水木先生は人々を苦しめている貧乏を
呪い、その原因となっている社会の悪に激しい怒りを覚え、
それが原動力となって「悪魔くん」を生み出したのです。
悪魔くんはヒットしませんでしたが、それがきっかけとなって、
その後「テレビくん」「ゲゲゲの鬼太郎」とヒットが続き、
貧乏神とは縁がきれた水木先生でした。
(代わりに「いそがし」に取りつかれるわけですが)
水木先生のお母さんが、「イカル」というあだ名なのは、
とにかく怒るから。いやここまでではないと思いたいですが、
とにかく怒っている。
お父さんをこき使って家事をやらせて、
(あんた、あたしより長生きするんだから家事を覚えなさい!という理由。
お父さんも長生きなさったが、お母さんは一人になってもなお盛んである。)
夫婦そろって胃がいいから、食事の時間が少し遅れても、
一緒に住んでいる水木先生の奥さん、布枝さんに、
「ばかーっ!」「あほーっ!」と凄まじい勢いで怒鳴りつける。
コワイ。
そんなお母さんがこのマンガでは大活躍。
ついに困り果てた水木三兄弟は、お母さんをある施設に送り込むが、
そこは老人を虫にしてしまうというところだった!
こりゃまたアラマタの手によって救い出されたお母さんは、
相変わらずの暴力おばあさん…。
このマンガを買った時は、さすが「イカル」、と笑っていましたが、
今回読み返して、
老人介護の難しさや、このマンガを描かれた当時の介護ホームの
少なさや高さ、介護制度のなかった時代の大変さに思い至った私でした。
読み返すと、その時々で目に入ってくるところが変わって、
ちがう本を読んでいるような気がすることさえあります。