
「なんらかの事情」岸本佐知子(筑摩書房)
岸本佐知子さんの翻訳した「中二階」(ベイカー)がすきで、ある日図書館のエッセイコーナーを見たら、「ねにもつタイプ」という、気になるタイトルのエッセイがあり、
「気になる部分」とともに楽しませてもらったのでした。
そして今回も四捨五入したら100歳になる、という文章に笑った。若い方だと思っていたら、1960年生まれだった。
私も四捨五入したら100歳だしなあ(笑)。
どんなところが惹きつけてやまないかといえば、
「ファラの呪い
世に流通する不文律に盲目であるために数々の失敗をしてきた悲しい思い出があるので、今度こそ仲間入りを果たしたいものだと考えた。
不文律の恩恵に浴しているらしい他の人たちがしている髪形というだけで、なんだかキラキラして見えた。」
ああ、わかる、この世界の不文律の埒外にある感じ。穂村弘さんの「世界音痴」とか川上弘美さんとか…。
スプレーはすぐに出なくなり、傘運がなく、レジに並べば必ず自分の列が遅いのである。
いやここは違うな。私はこう見えて負けず嫌いなので、レジの早い遅いは一瞥で見抜き、なおかつ、いかに素早くお釣りを最小にするかに腐心しておる。
でも時々なにかのお菓子にはまり、それだけ買うのはミエミエで恥ずかしいので、ブロッコリーとか人参とか、野菜も買うのだけれど、
もらったレジ袋につめたら、D(ある時岸本さんがはまったスナック菓子)の袋の方があからさまに大きく、野菜の袋はちんまりしていてさらなる羞恥に打ちひしがれる、
「D熱」
(もちろん江戸川乱歩の「D坂の殺人事件」がどこかにあり、その隠蔽工作は近所の推理ずきの少女に見透かされている、とう妄想が入ってくるのだ)
「やぼう」もよかった。
ひらがなのグループ分け。
く、つ、の、へなどの一筆書き族とか、
ま は本来 は や ほ の仲間だが、という指摘。
これは東海林さだおの「アイウエオの陰謀」を思い出させるな~と思いながら、
岸本さんのじっとりした耳垢のような文章がまたたまらない。
というわけで図書館から借りた本ですが、旅先に持ってきて読んでしまいました(笑)。