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いつの間にか夜が明けた。


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私と息子の席の前の列のA~E席には新花巻から乗ってきたおばあちゃんたちがいて、

なはん、なはん、とおしゃべりしている。

お互いに持ち寄ったおにぎりやおかずを並べて、心ゆくまで旅を楽しんでいる。

こんなところまでわざわざおかずやら持ってこなくても、そこまで節約しなくても、

というエッセイも読んだことがあったなあ。

(私はふだん息子以外では本やマンガの中の言葉とおしゃべりしている時間が異常に長い)

でもどーでもいいようなことでいちいち大げさに笑い合うおばあちゃんたちが素敵に見えるのだきょうは。

きっと彼女たちは認知症にならない。

認知症の身内の世話をすることはあっても。

そのうちのひとりがフルマラソンに出場した身内の話をし始める。たぶん国際マラソンに出たひとのことだ。


(コーチに)最初の16kmを1時間以内に走るペースで行けと言われてな、と言っている。

16kmを60分だったら、サブスリーだ。すごいじゃ。前にマラソンをやっていたから出てくれと頼まれてな、ということらしい。

でもそのうちお弁当をまとめて、配られた蜜柑のオレンジが艶やかで感じがいい。

堅実なベテラン主婦たちなのだと思う。冠婚葬祭があったら、白または黒の割烹着を着用に及び、

全員で大量の料理を拵え小皿を並べ、親戚の男たちが宴会をやっている間、ずっと台所で料理と洗い物とおしゃべりを続けているのだ。

おばあちゃんたちの足元には国内旅行用のソフトタイプのスーツケースが並んでいる。堅実だ。真っ赤なスーツケースを選んでしまう自分は永久にこちら側に入れないのだと感じる。


それは50年前から決まっていたことだ。