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ちくま文庫から出ているつげ義春コレクションのエッセイとイラストの集。


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「自伝的エッセイ」は「大場電気鍍金工業所」の作品群がつげさんの人生から材をとったものなのだなあとしみじみ思わされる。


売血銀行とか、弟でマンガ家のつげ忠男について書かれた「つげ忠男の暗さ」「つげ忠男の不運」、「別離」を文章で淡々とつづった「自殺未遂」など、


つげさんの文章はやはりいいなあと思って読んでいると、

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「夢日記」で思わぬ展開に。いや夢なんだからなんでもありなんだが、



「昭和四十八年五月九日


どこかのマンションの一室で、金井美恵子さんを中心にして集まりがあるので出席する。


大きな部屋中に布団が敷きつめてある。金井さん以外はまだ誰も来ていない。


金井さんは洋服を着たまま布団に入っている。隣の布団の上にぼくも横になる。


もうすぐ大勢の有名人がやって来そうで、深沢七郎さんがすぐにも現れそうな気配がする。

ぼくは金井さんの乳房を服の上からわし掴みにする。彼女と親密な仲であることをライバルの深沢さんに見せつけようとする」



まあ夢ですからね。とは思うものの、つげさんと金井美恵子が知り合いだったとは知らなかった。

いや夢だから面識がなくてもいいのか、と思ったら、ほかの児童文学作家については、


実際には会ったことがないのだが、というような断りがあって、


じゃあやっぱり金井さんと面識があるわけだ。昭和48年というと金井さんは26歳、つげさんは35歳、

奥さんの藤原マキさんが唐十郎の状況劇場の「腰巻お仙」の一番最初のお仙役だし、


金井さんはエッセイ集で唐さんの舞台や戯曲についていろいろ書いているから、唐さんつながりで

面識があったのかも、と思う。


きょうたまたま、金井さんのエッセイ集の全集を書店に頼んできたところだったので、

(古本屋さんなどを探して買いなおしたりもしたけれど、25歳のときに一度全部手放して二度と読めていないものも多いので、まとめて出してくれてうれしい)


この偶然がうれしい私だった。偶然なのか必然なのか謎ですが。


水木しげるさんのことが出てくるのはアシスタントをしていたので当然だと思うけれど、

金井さんはなー。


「苦節十年記」では貧乏やノイローゼの話が繰り返しでてくるのだけれど、

それが読んでいてツライ気持ちになるかと言えばならないのがやはり文章が

上手いんだろうなあと思う。


水木さんも出てくるが、手塚治虫と二度会った話も載っていて、

無学で無知だったので、ホワイトで修正するという、その「修正」が分からなくて、

手紙でも問い合わせたけれど、実際に会ったときに目の前でやってもらったことや

原稿料のことなどを聞いたことが描かれていた。


水木さんもそうだけれど、つげさんも手塚治虫的なものへの違和があり、

手塚チルドレンの石ノ森、藤子不二雄などに対して、趣味的な投稿が遊びのように思える、

と感じているのが興味深い。


水木さんがつげさんへのアシスタント代を日払いで払ってくれて、

それで生活が助かったということと、そのアシスタント代を工面するために

あちこちに借金していたことも、本書で知った。水木さんの本では、

飄々としたつげ氏の姿(アシスタント代の入った紙封筒を上着の内ポケットに

入れたままにしているので、だんだんそこが膨らんでいくとか、


はたらくのが嫌いで、貧乏だと言いながら仙人のような雰囲気を漂わせているとか)が

描かれてはいたが、そのアシスタント代の工面の話はなかったなあ。水木さんらしい。


この本も「なぜいま『つげ義春』なのか」のあとで青山ブックセンターで購入したものです。

んー、行ってよかった。


ではでは☆