何回も観た映画 ブログネタ:何回も観た映画 参加中
何回も、いや、何百回も見たというのが大袈裟じゃないくらい、

「櫻の園」と「プリティーリーグ」は見返しました。

当然映画館じゃなくて、ビデオを買ってそれを繰り返し見ていたのですが、どちらもたまたまですが、近所のレンタルビデオ店(当時はまだレンタルDVDなどなかった)で500円くらいで購入したのでした。

「櫻の園」は吉田秋生原作で、その後リメイク版も作られたのですが、

私がはまったのは中島ひろ子主演のヴァージョンです。

湯浅芳子の訳によるチェホフの「櫻の園」を、毎年春の創立記念の日に上演する女子校の演劇部。

その演劇部の、

優等生然とした自分に疑問をもち、殻をやぶりたい気持ちで髪をソバージュにした清水(原作では志水)部長(中島ひろ子)、

彼女に批判的な目を向けるボーイッシュな副部長黒田さん(けっこうすきだったが、その後なにかに出ているだろうか)、

名門女子校になじめず、不良っぽい他校の生徒とつきあっていると言われている杉山さん(つみきみほ)、

清水さんが密かに憧れているボーイッシュでさっぱりした倉田さん(白鳥靖代)、

2年生の時期部長で舞台監督の城丸。


今年も「櫻の園」が上演される日が近づいたのだが、上演の日、

他校生と喫茶店で煙草を吸って補導された(誤解だったが)杉山さんのことが問題になり、上演は中止という騒ぎがもちあがり、

背が高くボーイッシュなことがコンプレックスになっていて、はじめての女役をこなせないでいる倉田さんや、

そんな時にソバージュにしてきたことで副部長から批判される志水部長などの思いが絡まり合う。

志水さんが倉田さんにその仄かな想いを告げる場面で、

じつは志水さんに憧れていた杉山さんが物陰から見ていて、ひとり煙草を吸う場面は胸が痛いほど上手かった。

でも私がすきなのは原作にはない、志水さんと城丸さんのどーでもいいやりとりなのだ。


朝たべてこなかったんなら、一緒にサンドイッチたべない?

と志水さんに誘われ、ミックスサンドはフルーツが食べたくて買うでしょ?それをもらったら図々しいやつと思われますよ、

ということでフルーツは半分こして、ツナとポテトでどっちがいい?

とか。

フルーツサンドのある豪華なミックスサンドなんか見たことがないんだけど、

そのやりとりのサンドイッチが気になって自作したくらいだ。

原作にもある、胸の大きいことを密かに気にして演技がダメになってしまった倉田さんに、

これを縫い付けておいたら胸が目立たないから、と志水さんがイミテーションの宝石のついたリボン(というか飾り襟?)を留める場面より、サンドイッチの場面がきになるってどういうことだ。

あとは演劇部の女生徒たちのほんとうに他愛のない会話が可愛らしい。黒田副部長に叱られてしょげるところとか、とりなす三年生とか、

城丸さんに、

「3歩以上走る!」

と言って眠たげになる3年生とか。

あー、細かいところまでよく覚えているなあ。

上演中止を泣きながら阻止した若い先生が岡本舞。

荒れる職員会議をそっと見た後、部員達が話し合う場面で、いつも厳しい黒田さんがやわらかい声で、

毎年毎年咲く桜見てると、去年の今頃はなにしてたっけ、って思うんだ、

というところもすきだ。

なんだかんだあって、上演が決定し、

幕が上がるまでの間に、杉山さんがふと、

「志水さん、きょうお誕生日でしょ」

と言い、みんなで小さくハッピーバースデーを歌って、幕が上がり、

志水さんが、小さく、

「行きます」

と言って、黒田さんがさらに小さく、

「はい」

と言って伝統の「櫻の園」の舞台があがる、その場面が特にすきだった。


「プリティーリーグ」はもちろん試合の場面がすきなんだけど、


最後の最後に、姉とずっと比べられてきたキットが鬼のスライディングを決め、

ダイヤモンドの女王様と言われた姉のドティ鉄壁のミットからボールが転がってセーフになる、

その最後の場面が最高だ。

でももっと素敵なのは、歳をとった女性選手たちが再び集まった時で、

みんなそれぞれにいい年の重ね方をしていて、キットとドティが抱き合うところ。


ん?


考えたらどちらも女だけの世界だなあ。

たまたまかな?

この二つが世界中のどの映画よりも名作だと思っているのではないけれど、

繰り返し見てその世界で一緒の時間を過ごすのが心地よかった、

そんな映画であります。

まあ、20年も前のことで、いまからそこまで入り込める映画に出会えるかなあとふと思う。