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「僕は髪の毛が少ない」、

書店のエッセイコミックコーナーはほとんど女性の作者によるものばかりですが、

紅一点ならぬ緑一点(でいいのか?)、前から目に入ってはいたんです。

しかし3ヵ月前に棚から姿を消し、

いつもそこにいてくれている、と思っていたのでややショックでした。

だったら買えば、って言われても。

太目を気にしているひとがダイエット本を買いづらいように、
薄毛を気にしている私にはその勇気がなかった…いやそうでもないけど。

きょう書店に立ち寄ったら、「芸術新潮」の新刊は発売されていなかったけれど、
「てれびくん」と「僕は髪の毛が少ない」がありました。

久しぶりに棚に出現していたので、なにかずっとそこにいてくれている
と思ったひとが転勤になってはじめて自分の心に気づいた的な。

それにこの本をはじめてみた時は胸がズキッとしましたが、
最近は世の中薄毛の女性はけっこういるものだ、

と思って前ほどじゃないというのもあります。

藁にもすがりたい思いでいるときより、
自分なりに妥協したあたりが私がこの本と出会うタイミングだったんでしょうね。


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エッセイコミックは作者の実際に体験したことをマンガにしたものです。

ダイエットや貧乏や育児やシューカツや霊視(ほんとうにそんなテーマの
エッセイコミックもあるんです)、娘が不登校になったり、お母さんが統合失調症
だったり、あかるく楽しくほのぼのだけではないです。

本書は男性にとってツライ悩みと真正面から向き合い、
心折れてしまった青年が、

スキンヘッド(坊主)

にすることで得た心の解放と、そこからはじまった
文字通り光溢れる人生を生き生きと描いています。

父方の祖父も父も禿げていたけれど、でも従兄はふさふさだし、
うちの母と僕は体質が似ているし、

まあ母方の祖父が禿げていたかどうかは分からないけど、

なにしろまだ若いし、音楽をやっていてオシャレに決めている僕だし、
そんな先のことまで…

と思っていた26歳頃、作者新井さんは薄毛に気づきます。

髪がセットしにくい?

それから事態は悪化の一途をたどり、

とうとう新井さんは世の中にシャッターをおろしてしまいます。

ひきこもっていたわけではありませんが、ハゲであることが心に突き刺さって、
人付き合いに消極的になってしまいました。


帽子を手放さなくなったきっかけの事件はちょっと胸が痛みます。

薄毛を気にするあまり消極的になった友を心配した友人たちが、
合コンに誘ってくれて、新井さんもふたりの気持ちに応えようと明るく、
快活にふるまっていたのですが、

運悪く照明の真下の席だったため、酔いが回った女の子に
言われてしまったんです。

「髪ヤバくない?」と。

打ちひしがれて空気と化すしかない新井さん。

男の人は打たれ弱いものなのだった。


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その後はどこにいくにも帽子が欠かせない新井さん。

仕事はアルバイトばかりで、誰とも口を利かずやりすごせる
ことだけを考えている。たべるために働かなければならないけれど、
ハゲだし、音楽ももうやれないし、

うつろな目で日々をやりすごすだけ。

このあたり読んでいて泣きそうです。


自分もまだ青年なのに、自分より若い人が恐ろしくて
距離を置いている新井さんが、ある日思い切って、

スキンヘッドがカッコいい(そして人気者)職場の若い人に
声をかける場面があります。


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「自分、若ハゲっスす」(どう発音するんだ?)

しかしこのさっぱりとした気持ちのいい竹下君が、
23歳からスキンヘッドにしていることを自分から打ち明け、

新井さんもその帽子はハゲ隠しでしょ?とサクッと言って、

自分も頭の形がいいわけじゃないけど、案外気づかないもんですよ、

と新井さんにスキンヘッドを勧め、ファッションも女の子も、
あきらめなくても大丈夫、自分もモテてるし、わからないことが
あったら教えますから、

と大きな心で言ってくれて、
竹下君、ありがとう、君はいま新井さんと同時に私の気持ちも
救ってくれたよ!と言いたい。

いやスキンヘッドにはしませんけどね。


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薄毛の悩みから恋愛も夢(音楽とか就職とか)もあきらめ、
あまり積極的に働けなくなったことから借金もあり、
新井君のハゲは彼を食いつぶそうとしている感じ…

そこへ現れた救世主スキンヘッド!


迷いはありましたよ。
コワい人と思われたらどうしよう、と新井君はほんとうに
ハゲたひとがスキンヘッドにするまでの心の揺れをきちんと
みせてくれました。


が。

スキンヘッドにした途端やってきためくるめく光の世界。まぶしいっ!


ハゲだからスキンヘッドにしたんだよ!

と自分からカミングアウトできちゃう新井君には
親しく話しかけてくれるひとが増え、

髪を気にして仕事も消極的だったのがバリバリやって、
時給はぐんぐんあがるし、リーダー的な仕事も任され、

前向きになったところでプログラミングの勉強をしはじめたり、
絵を描くのがすきだったな、とイラストを描き始めてブログを
はじめたり…

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そこから道がひらけて、本書につながったのですが、



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「ハゲて…よかったのかもしれないな」

この言葉は光となって、

新井君の満月のような頭を光で包み込みつづけるでしょう。


ハゲてしまったひと、ハゲが心配な人、

のみならず、


現在いろんな状況の中で出口が見えず、もがいているひとにも
ヒントになる本だと思われます。


新井君がスキンヘッドにした途端、世界が一変したところは、


私の場合金髪にしたときかな。


んー、人生にゆきづまったら外国語を習うといい、
と伊藤比呂美さんの本にありましたが、

キンパもおすすめです。


黒に戻した現在、私のまわりには心のやさしいひとが多いせいか、

黒も落ち着いていいけど、金髪も似合ってましたね、
と言われることが多く、

そういわれると心の中の金髪の自分もうれしい気がします。


内面はたしかに大事だけど、外見に自信を失って苦しんでいるときに、
無理やりにでも内面に自信を持て、といってもできるもんじゃないです。

そこで大胆にバッサリと、スキンヘッド!金髪!


ダイエットも外見はかわるかもしれませんが、
一気にやせるのは健康上問題があるし、

なにしろ数時間で別人になれるのは髪ですよ。

スキンヘッドはともかく、

あしたこそカットに行ってこよう!

えーっとね、3ヵ月ぶりです(笑)。