劇団ゼミナールによる、
「井上ひさし笑劇場」
(盛岡劇場 12/19、20 20:00~)
井上ひさしを読んだきっかけは思い出せないのですが、最初から保育園時代熱狂させてくれた「ひょっこりひょうたん島」の脚本家だと知っていたわけではなくて、
高校時代に井上ひさしのエッセイ集で知って、えーーーー!!と仰天したのでした。
「井上ひさし笑劇場」は井上ひさしのコント集から選んだ8タイトルを上演したのですが、
最初に若い劇団員が前説をやって、その時に「ひょっこりひょうたん島」は知らないだろうなあとは思ったけれど、
てんぷくトリオも知らなかったのには愕然としました(笑)。このお芝居のために調べてはじめて知ったそうです。
伊東四朗はいまもテレビのバラエティやCM、舞台や映画などでよく見るから知っていても、
あとのふたりは知らない、、、それはそうだろうけど、
あ、でも私も戸塚睦夫って知らない…。
井上ひさしが浅草のストリップの前座のコントを書いていたのはエッセイ集で読んで知っていたけど、てんぷくトリオの脚本もやっていたとは…。
まあ何もかも知らないことだらけの人生ですわ。
そしててんぷくトリオを劇団ゼミナールの三人のおじさんが鮮やかに演じたわけです。
今年のもりげき王の覇者、斎藤英樹さんの優勝作品への評に、完璧なコント(最高のだったか良くできただったか、ちょっと忘れた)という言葉があり、
もちろん貶しているわけではないが、そこは欠点でもあり得る、というコメントに対して真っ向から、
どうじゃ!
と言っているような題材を選んだなあと思っていました。
1、今年もよろしく
立ち位置をめぐる三人のバトル
2、冷たい戦争
著名人の父と息子の仁義なき戦い…しかしカメラの前では仲のいい親子を演じ…。
3、おかしな精神分析医
患者にカードを見せ、これが何に見える?と問う医師。シンプルな図形ばかりなのだが、円を太陽と答えれば月だよ、でポカリ!また円い図形が出たので月と答えれば今度はちがうよとポカリ!
鍵穴?ちがう、人だよ!
散々患者の頭をポカリとやっている、この「おかしな精神分析医」がやがて正体を表す…。
このどんでん返しはいまの時代では予想がつくものですが、そしてうつ病による自殺が過労死認定に認められたり、
過酷なサービス残業や荒れる教室などで心を病む人も多くまた、昔に比べて心の病の認識もだいぶ変わってきたいまこのネタをやるのとでは違うところもあるのかもしれません。
でもアクションや表情がこのコントをキラッと見せていた気がします。
4、村長と詐欺師
英語堪能の求人に応募した男と面接する村長。フィーリングで日本語をそれらしく英語化する男。
そこへ外国人の女性登場。もちろんトリオによる女性なので、すごい女装である。これだけで充分なんだけど、この三人のやりとりが可笑しい。
しかしこれにもどんでん返しが用意されていたのだった。
5 、流行作家
頭をかきむしり、座卓に向かって原稿を書きあぐねている流行作家。在りし日の井上ひさしを重ね合わせたりする。
6、結婚式と葬式の間で
結婚式が決まって浮かれている先輩社員と、奥さんに死に別れどん底の先輩社員、
の間に挟まれ、暗くなったり陽気になったりの切り替えがうまくいかず、
どちらにもひっぱたかれたり凄まれたりで散々な男。しかも、途中で一方は二股をかけられていたのがわかって婚約破棄、
一方は奥さんが息を吹き返し、
男はやってらんない、のポーズ。
7、殺しのテクニック
電車で飲んでいる男。
車掌がきて注意するが、そこへ謎の女性登場。
じつは女と酔っ払いは夫婦なのだった。
酔っ払いが席を外した隙に車掌に殺人を依頼する女。酔っ払いの亭主のせいでつるっぱげになった、と、ハゲづらの頭をさらす。
女が席を外すと今度は酔っ払いの亭主が殺人を懇願。やっぱりあいつのせいでハゲになって、と、ハゲづらを…。
間で揺れる車掌が運悪く転んだ拍子に石に頭を打ち付けて死亡。
そして意外な結末を迎える…。
印象に残ったのは、
冷たい戦争のアクションと時代を感じさせるファッション。
村長と詐欺師のドタバタ。
殺しのテクニックのどんでん返し。
ちょっと冷たさのある(「冷たい戦争」は最後は父子で殺しあうのだからちょっとじゃないが)ものばかり。
井上ひさしはどこかに冷たい感覚があって、それが笑いとタッグを組んだ時にピカッと光ったのかなと思ったり、
不条理な笑いというとクールな感じだけど劇団ゼミナールの芝居と演出には体温や汗があって、
私はセリフだけで進むよりアクションのあるコントがすきで、
「冷たい戦争」がすきでしたが、
息子は「殺しのテクニック」、
そして「殺しのテクニック」を2日目に見た人にしかわからない謎の白い生命体、一瞬抜けた差し歯、がよかったそうです。
ではでは☆