少しずつシロさんとケンジの関係も変わってきた気がします。
ケンジがシロさんにぞっこんでシロさんはやや冷たい感じだったのが、
最近はずいぶんケンジに合わせているな~と思うことがあります。
また、ケンジのこういうところは俺にはないものだ、見習わなきゃな、とか言って、
この巻ではないですが、手土産に手作りのバナナケーキを持って行ったりして、
だんだんまるくなってきた気がします。
というところで豪華京都旅行のプレゼント!
しかもケンジが喜びそうな場所、演出、エスコート。どうした!なにがったいったい!
カフェ好きなのはケンジですが、そこに合わせてあげるこの優しさ。
このあとアンティークのすてきだけど高いティーセットを2客買ってプレゼント。
しあわせすぎてだんだん怖くなってきたケンジでした。
人前でゲイだと思われるのをそれこそ死ぬほど気に病むシロさんですよ。
この真相は、じつはお正月に実家にケンジを連れて行ったところ、
お母さんがあとで寝込んだので今年からはシロさんひとりで来てほしい、
と父に言われたシロさんの罪滅ぼしでした。自分の実家から言い出したことなのに、
ケンジに来るななんてひどいことだと思うけど、ごめん、というお詫びの旅行のつもり、
だったみたいです。
コミックでは豪華旅行のスポットについての情報もはさみこまれており、
お得感倍増でした。でも一泊5万円の俵屋…。マンガで覗けただけで満足なんですが。
「きのう何食べた?」では2、3巻前のエピソードが次にまた出てきたりして、
いつも同じように思えるシロさんとケンジの日常も、時の流れのなかで少しずつ変化
していっているんだなあと思えるところがまたいいのですが、
ケンジには「顔見知りの泥棒」みたいなお父さん(たまに家に帰ってきては金をよこせと
暴れてまた出ていくろくでなし)がいたのですが、お母さんとはずっと別居で、
何年か前に生活保護申請のための書類が実家のお母さんのところに来たと思ったら、
そのお父さんが亡くなったそうで、ケンジが一家代表としてお骨をもらって実家にもってきた、
そういう場面です。ケンジのお姉ちゃんの息子が自分にそっくりでうれしいという気持ち。
だいぶ前の巻で、「絶対子どもは産まれないけど、生まれたらなんて名にしようとか
考える」とにこにこしていた時がありました。
ケンジのDNAは甥っ子くんにつながったもよう。
いっぽう、一人っ子のシロさんのDNAですが、
そのシロさんの名前から自分の赤ちゃんに悟朗と「朗」の字を
受け継いだ赤ちゃんがいたりして。
シロさんとスーパーの買い物分け合い仲間の加代子さんという女性の娘さんが、
赤ちゃんを産んでいたんですね。
シロさんとケンジのふたりの物語に姿を少しだけ見せた人たちにも、滔々と横たわる川のような物語が
あるということを感じさせます。
よしながふみのマンガは、ほんとうによく計算されていて、あー、この話はこうなったのか、
と、長く連載されているマンガなのに前のエピソードがいかんなく生かされていて、
その生かされ方が、人生ってそうだよなあと噛みしめるような感じで、
計算されているというと冷たい感じですが、
その計算が鉛筆と紙できっちりやられている感じで。
今回ちらっと出てきた、月に一回遊園地で息子の姿を見ていた聖子さんも、
相変わらず一方的なところはありますが、
あー、落ち着いて暮らしているんだな、従妹のことを心配するくらいに、と
思って、マンガの中の登場人物たちなのに、まるでご町内や親戚くらいの
距離感になってしまっていました(笑)。
ではでは☆