パリの下町と浅草のスピリットは似ている、

というようなことを森茉莉は書いていたけれど、

今日見てきた写真展とリクリエイトの版画展から、

第二次世界大戦を挟んだ20世紀の写真家と、

江戸時代の浮世絵師にも重なるものを感じました。





浮世絵も写真も「プリント」が前提だから、そこで相通じるものがあるのかなあと考えたりもしましたが、


風景の発見

という点で同じ感覚があった気がします。

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(フェルメール展につづいて撮影可です)

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おとっぁん(北斎)は浮世絵に風景画というジャンルを確立するのに一役買った、と音声ガイドで宮沢りえ・お栄さんが語っていましたが、

(「光の王国 フェルメール展」に続いて、小林薫&宮沢りえの親娘が掛け合いをしていて楽しい音声ガイド。

なぜか杉浦日向子の「百日紅」が読みたくなる。

また最近読んだ本によれば、応為、お栄とも呼ばれるこの出戻り娘は、宮沢りえが演じるとお侠で愛らしいが、

いろんなイメージのお栄さんがいるなあと思う。北斎がおーいと娘を呼ぶことから応為だったと思っていたけど、

父親(北斎のことだ)を、おーい、と呼ぶような娘だったから応為。どんな積み木くずしだよ。とはいえ、この娘は画業に優れ、たがために自分に及びもつかない夫(浮世絵師)に愛想をつかして出戻ったので、父親のことは絵師として尊敬していたと思う。

実際北斎は前妻との間の孫の積み木くずしに悩み、引越しグセはそのせいもあったみたいである。

これはきょうの音声ガイドには関係なく、最近自分の中で北斎ブームがあるので、北斎について書かれた本を読み漁って得た知識であります。)

大胆で遊び心のある構図。
滝の表現の追求。

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音声ガイドで北斎(小林薫)がこの滝口の模様と、北斎が作った小紋のデザインが似通っていると話していた気がします。


「北斎模様は葛飾北斎が染小紋のために創作したオリジナル模様で、江戸時代・文政8年に出版された「新形小紋帳」という絵手本に百数十種類の文様を自身の筆で描き文様の名称を書き添えています。」


この北斎模様の画像は展覧会にあったものではなく、北斎で検索して見つけたものですが、おもしろい発見だなあと思いました。


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また、フェルメール展につづいて「青」です。


「諸国瀧廻り」と「富嶽三十六景」の展示なのですが、滝の表現と青に注目してしまいます。


解説パネルにあった、


福岡伸一さんのフェルメール・ブルーから北斎の青への解説パネルがよかった。


宮澤賢治の「春と修羅」の引用から、ひとが本能的に惹きつけられる青を、


フェルメールはラピスラズリを惜しげも無く使って表現しようとしたが、粒子の粗いラピスラズリではまだ青に勾配をつけたりグラデーションをつけることは難しく、


北斎の時代になってラピスラズリよりもっと粒子の細かいベロ藍、プルシアンブルーを使えるようになり、



「とまっていたフェルメール・ブルーを世界ではじめて動かして見せたのである」

と結ばれてありました。


宮澤賢治、フェルメール、北斎。


べつにもらったリーフレットには、不思議な文化の円環として、


蘭学から花開いた秋田蘭画、その延長上にある北斎の浮世絵、浮世絵に影響を受けたオランダ人のゴッホ。


ジャポニズムブームが藤田嗣治が西洋で認められる下地を作ったといえる、


とオランダと江戸、ジャポニズム、藤田嗣治と円環がさらに大きくなっております。


藤田嗣治の「秋田の行事」が旧秋田県立美術館・平野政吉美術館から動かされたことについてはなんとなく勿体ない気がしているのですが、


秋田県というだけではなく、


秋田藩(佐竹藩)、江戸の浮世絵と秋田蘭画など円環をひろげて考えると興味は尽きなくて、

秋田市の美術館の近くには


鉱業博物館もあることだし、次は万全の体調と時間の余裕をもって、そちらも見に来よう、


と思う私でした。