いちばん最近映画館で観た映画 ブログネタ:いちばん最近映画館で観た映画 参加中



ペコロスの母に会いに行くです。


{C908A73A-5BBF-46FB-9B0B-1D47676E0500:01}


ちょうどきょう、認知症の父に会いに行ってきたところなので、
この映画の話をします!

赤木春恵のお母さんと岩松了の息子、ふたりだけの物語だと
思っていたので、そのとりまく人たちとの物語に泣きました。

私もいま、いろんなひとのおかげで父が元気でいられるんだなあと
やっと身に沁みてきたところでして。

ご近所のひとや父の友達の大工さん、

しかし最近ではやはりなんといっても、
介護保険制度ですよ(笑)!!

ケアマネージャーさん、ヘルパーさん、デイケアの病院の方々、
といった人たちが訪問したりプログラムを組んでくれているおかげで、

いまのところ苦しい気持ちにならないで済んでおる。
まだ軽いからかもしれないけれど。

岩松了さん演じる息子はバンドやマンガをプロフェッショナルに楽しみつつも、
本業の営業は芳しくないというサラリーマン。

それは原作の岡野雄一さんそのものなのらしいですが、

いろんな雑誌で「ペコロスの母に会いに行く」を紹介していたのですが、
あのペコロス頭をお母さんがペチャッ!と叩く4コマも紹介されていたことがあり、

その時はなにも感じなかったのですが、

映画で、認知症の度合いがあがったみつえさんが、
ホームに訪ねてきたゆういちが誰だか分からず怯え、

ゆういちがキャップを取るとはじめてホッとし、

なあんだ、ゆういちだったか、と長崎弁でなんどもなんども
安堵の言葉と共に頭をぺしぺし叩くんですね。

ここ、すごくよかった。目頭が熱くなって、うわっ、コンタクト落ちそう、
とか思って困った(笑)。


映画を見ているときは、半分は認知症の父とみつえさんを
重ね合わせていたんだけど、


残り半分は息子と自分のことを考えていた。

はげちゃびんのゆういちは息子だ。
息子が帽子を被っているだけで怯えてしまうみつえさんは
自分だ。

帽子をとってもついにゆういちだとわかってもらえなくて、
衝撃に耐えられないゆういちは2,30年後の息子だ。

息子は最近、自分の障害について悩みはじめていて、
おれの一生、終わったなと、とか言って泣いていることがある。

ふつうの子のような人生はもう歩けないことがわかっているんだ、
という深いゼツボーが襲うらしい。空々しい慰めも効きそうもないので、
すこし離れたところで見守っているしかない。

その本人の感じている不安や惧れや悲しみを共有できない寂しさが、
認知症の家族をもった寂しさなのではないだろうか。

「ペコロスの母に会いに行く」

を見て、

父と自分、

息子と自分、

将来の自分と息子

のことを多層的に重ね合わせていたのである。


ホームでゆういちが「無職仲間」と握手した、
やはり認知症の母親を抱える中年の独身の男性がいて、
演じるのは竹中直人。

ドイツでずっと仕事をしていたエリートで、
微妙にずれたカツラを被っているキャラクターである。

「Shall We ダンス?」を思い出すなあ。

はげであることをキャラクターとして受け入れて、
開けっぴろげなゆういちに対して、竹中直人はこそこそしている感じ。

だったのだが、思い切ってカツラを取ったあとの清々しい顔と
サッパリした男らしい雰囲気。

お母さんが自分をわかってくれないことに悩んでいたのだが、
なにかふっきれたのだった。

ゆういちには息子もいて(離婚して息子はゆういちが育てていたらしい)、
この息子も若いながらもおばあちゃんを大事に思っていていい子なんですよ。

ゆういちが営業の途中でサボっていることもチクッと刺すが、
おばあちゃんがボケていていやだ、とか言わない。

ゆういちはひとりではなく、周りのひとたちの手や目がつねに注がれている。

それでもほんとうに孤独な気持になることもあるのだろうけど。

いっぽうみつえは認知症でいまのことはすぐに忘れるけれど、
昔のことはよく思い出せるのだった。


兄弟が多くて学校にやらせてもらえなかったこと、

仲の良かった女の子が口減らしで長崎にもらわれていったこと、

ピカドンの日、長崎の幼馴染のことが心配だったこと、
(みつえは天草に生まれ育った)

結婚した当時の夫のこと、

ゆういちがまだ幼かった頃、
給料が出るとその日のうちに財布の底をはたくまで
飲んでしまう、酒乱の夫。

酒乱だけではなく、神経症で追跡されている妄想があった夫…。


ある日夫に殴られてもう死を覚悟してゆういちとふたり、
海をずっと見つめていた時に、

なぜか届いた一通の手紙は幼馴染のチエちゃんからのものだった。

このみつえとチエ、原田貴和子と、原田知世の姉妹なんです!

(愛情出演とあった。「愛情物語」にひっかけているのか?)

チエちゃんからの手紙でかろうじて死を思いとどまったみつえは、
手紙をくれたチエを訪ねるが、

チエはピカドンの後遺症で(見た目はなんともない内部被爆だったらしい)、
まだ若いのに亡くなったばかりだった。手紙は彼女のお店のママが残ったものを
整理していて見つけて投函したのだった。


母をつれて長崎ランタンの祭りにいくゆういち。母の妹たちもお姉ちゃんと
会える最後かもわからんと来てくれたのだけれど、ゆういちいわく、
(おばちゃんたちもこりゃあきとると)。

おしゃべりに夢中になってしまうおばちゃんと、ひょいといなくなってしまうみつえに
翻弄されながら、ランタンの祭りの中をさまようようにみつえを探すゆういち。

みつえは死者に会っていたのだった。チエちゃん、夫、幼かったころのゆういち、
若かった自分。

懐かしい慕わしいものたちと一緒にいるみつえを、
ゆういちは大きなこころで受けとめ、

ぼけるとも悪かことばかりじゃなかけかもしれん、

と思うのだった。


息子が帰ってくるのを駐車場で待っている文字通り危ないみつえ。
バックするとそこにみつえがにこにこ笑って待っているんだもんね。
ホラーですよ。

けれどゆういちに叱られたくない気持ちで、また親ば悪もんにして、
という言葉が可愛らしくてよかった。

幼女になって可愛らしいみつえと、周りと手をつないでいくゆういち。


ほんとうに最近みた映画ですが、
見逃さないですんでよかったーです!