11月はリアルの月。


今年も井上雄彦先生が約束通り、「リアル」を読ませてくれてありがたいです。


自分の誕生月が11月なので、さらにうれしい。


一年に1冊ずつのゆるやかな流れで描かれるこのマンガがこのままずっと続いて行って

ほしいと思う。急いで結末に着きたくない。










左端の高橋くんが本来の主人公のひとり(あと二人いるけど、今回はエキストラ出演でした)ですが、この巻の主人公は断然、スコーピオン白鳥。


三人はおなじ病院で、おなじリハビリテーションを受けている、「障害者」ということになるのでしょうが、



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しかし、


スコーピオン白鳥は断じてリングに立たないわけにはいかない。

かつてタッグを組んでいたマンバ松坂が待っているから。


リハビリに真面目に取り組んでいる白鳥さんなのに、

鍛え上げられた筋肉で重い上半身が災いして、自力では一歩も

あるくことができない。痩せ細った下肢。


私が通っている某ジムには「1ヵ月寝たきりで筋肉量はどれだけ落ちるか」

というコワイポスターが貼ってありますが、ビックリするほど落ちます(笑)。


まさか!と思っていましたが、「リアル」を読んでヒシヒシと筋トレの重要性が

わかりました…。ちなみに50%落ちます。風邪で半日寝ていただけでも起き上がったときフラつきませんか?


立っているというだけでも下肢に負荷がかかって筋肉に刺激が与えられているらしいです。

それがまったくない寝た状態がなにをもたらすか。


筋肉の衰えは残酷なくらい速く、回復のリハビリは時間がかかります。


でも、希望の光は見えないわけじゃない。


白鳥さんの主治医はリングに上がりたい白鳥さんを強制的に引き止めるかわりに、

リングシューズをまず穿いてみなさい、なにか変わるかもしれない、という処方をだしました。


このドクターのひとの心と体については分からないことだらけだ、という

言葉もまた深い。誰でも経験があることですが、


すきなことや大事なことではビックリするほど力がでませんか?


私もいまとなってはフルマラソン2週連続出場ってなんだったんだ、という感じですが、

あの時はやりたい!絶対やれる!というパワーがありました(笑)。


沿道の声援も大きな力を貸してくれました。


悪役として大人気(ブーイングもすごい!)のスコーピオン白鳥、

一歩もあるけないどころか、ロープをこえてリングの中に入るさえままならないのに、

こんなに大歓声を浴びて、と、ハラハラしているのは高橋くん。


花咲さんは落ち着いています。


そこにはスコーピオン白鳥への絶対の信頼があったからです。

スコーピオン白鳥はプロフェッショナルとして、「クソ野郎」(スコーピオン白鳥の自分のファンへの親愛をこめた呼びかけ)をう裏切るわけがない、という。


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同期デビューで、タッグを組んでいたマンバ松坂とスコーピオン白鳥。


ふたりを太陽と月に隔てたものはなんだったのか。


マンバ松坂の方がイケメンだったからか?


ヒール修業に海外に出された白鳥は、そこであの舌なめずりの不敵な面構えの

スコーピオンになる。



13巻はスコーピオン白鳥とマンバ松坂の試合に、白鳥さんのいままでの人生と、

そしてスコーピオン白鳥の熱狂的なファンで、おなじリハビリ仲間(リハビリ歴はちょっと上)の

花咲さんのエピソードが重なり、


自分もリングサイドで応援しているような気持ちになっていました。






白鳥さんのこの顔、最高にカッコいい!


悪役としてのスコーピオン白鳥がいて初めて、ベビーフェイスのマンバ松坂が

暉く。その輝きを受けて青白く燃えるスコーピオン白鳥。


天に太陽はふたつ要らない、と、ふたりの事務所の会長は言いましたが、

太陽と月、ふたつない天は天でなってない…ダジャレですみません。






花咲さんのこのセリフも淡々とした表情もよかった。


ほんとうのファンでなければ言えないセリフではないでしょうか。



13巻ではリングで闘う白鳥さんは、自分の人生や「障碍者」というレッテルとも戦っていました。


その戦いが、リングサイドで応援していた花咲さんの殻をぶちやぶり、


お父さんがいなくなった日から自分の中にこもって、

成績優秀、スポーツ万能のクールでカッコいい高橋くん、


というレッテルの中に安住しようとしていた孤独な高橋くんの

蓋をあけたのでした。


13巻は断然、スコーピオン白鳥がカッコいい、


でも花咲さんもカッコいい、


高橋くんの茫然と泣く顔も清らかでよかった。


泣いてばっかりだった(笑)。


14巻ではほかの二人の主人公たちにも会えるのでしょうか。


「リアル14巻」は2014年11月の予定です。

いま気づいたのですが、2001年から1年1冊ずつ、発刊されてきたのですね。


途中から読みはじめた私にはそういう思い出がないのが残念ですが、「リアル」の最初からのファンのひとだったら、この年にはこんなことがあった、この年にはこうだった、と振り返る道標のようなものになっているのかもしれないなあ。


私が「リアル」をよみはじめたのは2011年でした。それは絶対忘れないと思う。



ではでは☆