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何と言っても「漂流教室」!

楳図かずお先生の作品はどれも怖くて好きでしたが、このSF作品の怖さはリアルでした。

大人になって考えてみると、子どもの中にある大人への不信感や恐怖心をグロテスクに表されていたところも大きいのかなと。

ふだん温厚だった用務員さんが変貌して独裁者になったり、

同級生が盲腸になって子供達だけで手術をしなくてはならなかったり、

その息苦しい恐怖。


最後の方で主人公の少年のお母さんの狂気に近いような息子を求める力がやっと届くのですが、最後はいまだに朧です。確かに読んだはずなのに、あまりにそれまでに過酷な未来が恐ろしくて、

覚えていない…。

楳図かずお先生の作品では、

「おろち」の中の「姉妹」もすきでした。


上流階級の姉妹、上の娘は愛らしく素直で賢く誰からも愛され、

下の娘はひねくれていて卑屈で成績も容姿も凡庸で、

とひどく差があるようですが、幼い頃は二人の間にそう差はないんですよ。

ただ二人の母親がヒステリックに妹のやることなすこと、すべてを悪く取り、姉娘のことばかり褒めるんですね。

妹の方があどけなく可愛らしかったのに。


同じように植えたチューリップが妹の方はちょっといじけた風に咲いてしまったのを、お母さんがひどく責めるんですね。まだ4、5歳の妹娘にお前は何をやらせてもダメだ、と決めつけていびる。

だって妹の方がせっせと水やりもしていたのに、咲いた花だけでそこまで言わなくても…と思いながら、

親に見限られる絶望と恐怖を感じました。

楳図先生の作品は人の心の怖さというものを最初にそっと耳打ちしてくれた気がします。


その後二人の姉妹はどんどん差がついていくのですが、なんということか、ふたりは家系的にある難病になることが運命付けられていたんでした。

どちらがその難病になるのかは誰もわからない。姉妹のうち片方だけが遺伝子を引き継いでいるらしいんです。

なんだかんだあって、最後に美しく心の優しかったはずの姉が自分可愛さのあまり人を殺そうと計っていたことを妹が暴くんですね。

姉が完璧な人間ではなく、そういう醜さのある人間だと知らしめたかった、ち涙する妹…、子どもの頃は妹は姉を憎んでいたのかと思いましたが、

いまはもう少し複雑な感情があって、愛と憎しみは同じ意味だと思い、「おろち」はいまこそ読み返したいなあと思ったり。


やはり楳図かずお先生の「鬼姫」。

鬼姫と恐れられる残忍な性格の姫の影として連れて来られたおとなしい村娘が、

鬼姫そっくりになることを強いられる生活の中で、ついにほんとうの鬼姫を恐ろしいやり方で追い落とし、

鬼姫以上の鬼姫になってしまう…


大人になっても忘れられない怖さです


楳図かずお先生以外にも昔は怖いマンガ家の先生が多かった気がしますが、


「エコエコアザラク」の古賀新一先生。

「エコエコアザラク」は絵柄は怖いけど、最後の方は迷走してギャグマンガになったりして、ヒロイン黒井ミサはチャーミングでしたが、

怖かったのは「ネズミ少女」というタイトルはうろ覚えなんですが、

容姿がネズミみたいだと継母にいたぶられ続けた少女がついに巨大なネズミになって復讐するというストーリーで、

この少女のネズミめいた容姿が怖かった。

あと、日野日出志のマンガは何がなくても絵柄だけで有無を言わせぬ怖さだった。

いまでは「ガラスの仮面」の美内すずえですが、

その前は怖いマンガも上手くて、

「十三月の悲劇」や「魔女メディア」、「白い影法師」など、ストーリーテラーですから、翻弄されたものです。


しかし、いちばん震えるほどおそろしいのは、

あの「ガラスの仮面」の連載中に「黒百合の系譜」という恐怖マンガを三回連載の形でおなじ白泉社の「LaLa」に描いた美内すずえ自身ですね。

どんだけ体力があるんじゃ!

欄外の近況に、二週間絶食で描いた、とかあり、ゾゾーッとしたものです。


多くの怖いマンガに出会ったなあ。

高階良子「昆虫の家」「赤い沼の秘密」、山岸凉子、魔夜峰央(「パタリロ!」以前はビアズレー風の繊細な絵柄を活かした怪奇マンガが多かった)、藤子不二雄の「魔太郎がくる!」、つのだじろう「うしろの百太郎」「恐怖新聞」、



とても書き切れませんが、描いてくださったマンガ家の先生たちのおかげで、

豊かな子ども時代でした!

ありがとうございます。