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「ホームレス中学生」、ベストセラーになったのって、いつだったかな。

奥付には2007年とありました。

流行りものには手を出さないと決めているわけでもなく、ブームが終わった頃、

読んだりする。


エッセイでもノン・フィクションでも社会問題でもなく、「大衆演芸」に分類されて、隣には「ホームレス大学生」が。


ベストセラーになったし、読んでいなくても大体どんな内容か、あちこちで知っていたのですが、

心に残ったのは、田村さんがまだ学生の三人の子ども達を残し家を出て行ったお父さんになんの恨みも持っていなかったこと。


「解散!」の一言で、まだ中学生の田村さんなど、兄と姉に迷惑をかけまいと、


友達の家にいる、と嘘をついて、ずっと住むところも食べるものもなく、辛い思いをしていたのに、

お母さんが亡くなってからずっと一人できょうだいの世話をしてくれたお父さん、と思っている。

病気で早く亡くなったお母さんについては、末っ子でアトピー体質だったこともあって、ほんとうに可愛がって甘やかして育てて、

お母さんと幼い田村さんのくだりは、読んでいるこちらまで幸せな郷愁につつまれます。

田村さんを助けてくれた恩人、先生たちのエピソードもよかった。

ホームレスになり、公園の「まきふん」の中で寝泊まりしていた田村少年を救った同級生のお母さん、川井さん一家。

そのお隣さんでやはり田村きょうだいを可愛がってくれた西村さんのおばさんが亡くなった時、田村さんはお母さんの死を重ね合わせて、


生きる意欲を失っていきます。

さっとした本の紹介や話題になった空腹の時にダンボールを齧った話などより、


このいままで苦しさから逃げ出さずにがんばってきた明るい田村少年が、生きる意欲を失いながらも、

5つ上のお兄さんの指導の甲斐あって高校にも入学し、表面上は明るくクラスのムードメーカーでありながら、

心はいつも死に傾斜していた…。

そんな田村少年を救ってくれたのは担任の工藤先生。国語の女性の先生なのだが、

髪が茶色くてもいいじゃない、と、ほかの先生とは違う発想だったり、
「私がこのクラスの担任やっていけるのかな」と弱いところも見せたり。

それは作っているのじゃなくて、ほんとうに先生と生徒じゃなくて、人間と人間という意識の人だったのだろうと思う。

そんな工藤先生になら、と、生きる意欲を失っている自分の気持ちを打ち明けた田村さんに、

先生は一通の手紙を渡す。

この手紙が一人で苦しんでいた田村少年を生き返らせ、心からの笑顔を取り戻させるんです。

ほかにも田村さんのまわりには、なんとか田村さんを助けてあげたい、助けよう、という人たちがたくさんいて、


ベストセラーのあと、トーク番組で、

それじゃあ印税が使い切れないほどだったんじゃない?と聞かれて、

お世話になった人にはご馳走したり友達と飲んだりして使い尽くしてしまいました、と、楽しいことのように言っている田村さんを見たことがありました。


あとがきに、いつか僕を見て周りの人が僕ではなく、お母さんを褒めてくれるようなそんな人になりたい、とありました。

母の日に勧めたい本、そう思いました。