姫神寄席 春風亭一之輔独演会、楽しかったです。
前座の春風亭一蔵さんの「長命」、元気でそそっかしい大工さんと万事ガサツな女房のやりとりがよかった。
「長命」はよく聞くんだけど、すきなのは、
「あたりには誰もいない、見つめ合う目と目、前を見ればふるいつきたくなるようないい女」
(すっかり覚えていないけどこんなですよね)
の繰り返し。
察しの悪い大工さんに何度も繰り返して、なぜお嬢さんのお婿さんが三ヶ月で青くなって棺桶なのかをまわりくどく説明するところですが、
あの繰り返しがいいんですよ。
「茶の湯」では竹坊がだんだん人格が変わって、
危険思想の持ち主に…。
落語は噺家によってずいぶんアレンジが変わるんだろうけど、
春風亭一之輔さんのまずい茶を我慢して飲み下す顔や身振りが忘れられない。
仲入り後の「ねずみ穴」は田舎から出てきた兄弟の絆と、
ねずみ穴から10年がんばって築いた財を火事で失う虚しさ、
貧しさの中で愛娘を吉原に売り、得たお金を擦られた絶望感を
自分が竹次郎になったように感じたです。
長い噺なんだけど、少しも長く感じず、もっとこの兄弟と一緒にいたいとさえ思ったくらい。
落語を聞く機会はあまりないのですが、こうやって地方に来てくれる噺家さんがいてくれて、やってくれるホールがあるなら、
できるだけ通いたいなあと。
余談ですが、市立図書館の連携貸出で「渋民図書館」の蔵書を借りることがありのですが、
きょうはじめてここにあるんだ、と知りました。うっかりものの息子は仲入りで図書館に入って本を読みふけり、
「ねずみ穴」の佳境、築いた身代を火事で失う竹次郎のくだりで、緊張した顔でそーっと戻ってきました。
前の方の席じゃなくて幸いしました(笑)。
しまった!と思うようになっただけでも成長ですよね。
図書館や本がすきで、時間を忘れるという子になっていることはじつはうれしいので、
注意ってしなかった。
「茶の湯」ではあり得ないほど笑っていただけに人情噺にどう反応するか、全部一緒に聴けなかったのは勿体無かったなとは思うけれど。