『かりこりせんとや生まれけむ』 会田誠 (幻冬舎文庫)
「会田誠展:天才でごめんなさい」森美術館
以来すきになった会田誠さんの文庫本をみつけたので
ひょいと買って読んでいたら。
ああ、かゆいところに手が届いたようなこのうれしさ!
それは美術とは関係ないところなんですが、
中島みゆきの「はじめまして」について、こんなに
スッキリ共感できた文章ははじめてです。
(中島みゆきさんの『はじめまして』)
「はじめまして」というご自身がおっしゃる「ご乱心の時代」に制作されたアルバムの、
ラストの曲、「はじめまして」について述べておられることどもに、
共感しまくりですよ。
中島みゆきの「はじめまして」がすきだというひともあまり多くはないので、というか、中島みゆきをほんとうにすきなひとじゃないと見過ごしている作品かもしれないので、その前2曲からの流れがあって「はじめまして」だ、
ということや、ポジティブなんだけどどこか狂ったような感じも指摘しておられるので、そこも頷く。こくこく。
「カレー事件」(きのうのもりげき王もカレー事件の話が豊作だった…それはまたあとで)、
「東金の暮らし」「僕の料理」「僕の文章」
など、美術や絵についてふれるものより、それ以外の日常についての文章が多いエッセイ集で、
幻冬舎のPR誌「星星峡」に連載されていたものだそうです。
「僕の文章」ではしゃべることも文章を書くことも苦手だと書いているのですが、会田誠さんのエッセイの文章はひどく読みやすいというか、息継ぎしやすい(笑)。
しかし最大の衝撃というか、共感は連載当時当時小学校1年生だった息子さんのことと、ご自身のADHDについて書かれた「子育て失敗中!」ですね。
小学校側の息子さんを支援学級に入れたらどうでしょうか、という提案と、さらに一歩進んで専門家に受診してみては、という圧力。うちと逆パターンですが、ここの部分は会田誠さんが個展直前で忙しく、奥様の岡田裕子さんが主に書かれておられる。
うちは私が最初から特別支援学級のある、障害児教育で有名な小学校に入れたかった。学区外だったので市の教育相談でさんざん普通学級でいいじゃないですか、とやられたのに屈せず戦って、晴れて特学。
というとまったく反対のようですが、子どもについて、自分の血が受け継がれたのではないかと思ったり、当時福岡で自分も病身である母親がADHDの息子の将来を悲観して殺害した、という事件に思いをいたすところは共感してしまう。
息子にしても社会に出ればいろんな誤解や摩擦や軋轢はあるんだろうなあと思うけれど、私は大人になるまでに力を蓄えて、ゆっくり自分のペースで成長してから社会に出ればまだ戦えるんじゃないかと思ったんでした。
最初から洗濯機のなかに入れられて混乱するより、自分を受け入れてくれる場所があると知ってから外に出たほうがいいんじゃないかと。
といっても、選んだことが正しいのか、息子の将来にプラスなのか、悩みはつきません。
天才美術家のエッセイにまさかこれほど多くの共感するところがあろうとは思っていなくて、ただ表紙がすきな絵だったので買ったのですが、私ってラッキーだなあと。
続編の「美しすぎる少女の乳房はなぜ大理石でできていないか」も機会があれば読みたいと思っております。