きょう、息子と本屋さんに入ったら、
「重版出来!」がコミックの平積みコーナーだけじゃなくて、
本に関する本、作家のムック本や「本の雑誌」「ダ・ヴィンチ」、書店員さんの本などが集められたコーナーにも置かれていて、
うれしくなった。「重版出来!」のなかにも、あるマンガを売るために関連コーナーにも置いてもらおうと努力する、営業さんのエピソードがあったので。
でもこちらはさわや書店さんの考えで、本のコーナーにも置いてあったんだと思うけど。
主人公は大学時代柔道部で活躍していた、黒沢心。
名前からして柔道の黒帯っぽい。
ふつう型破りな主人公はペーパーテストはよくないけれど、キラッと光るものがあって採用、というのがパターンですが、
出版社に入って編集者になろうと決めた黒沢さんは、運気アップの墓参り、ゴミ拾い、ボランティアもしつつ、
肝心の勉強も一生懸命やっていました。
一生懸命やってなお、運をあげるための積み重ねをする彼女に神様が微笑まないわけがない。
怪我のためにオリンピックで金メダルという子どもの頃からの夢に敗れた彼女が、いま、最終面接で熱く語るのですが、
読んでいる方はここで早くもグッとくるのですが、面接官はひややか。
と、その時、不審者が乱入!
面接の役員たちを伏せさせ、犯人を倒す、ダン!
しかしそれは、毎年変装して(面接の社長は代役を立てている)学生たちのほんとうの姿を見抜いていた社長。
すれちがった時の黒沢さんのできる!ぶりに試してみたくなったもよう。
社長を投げて入社って…。でもこの社長のエピソードでもグッときてしまうんです。
子どもの頃から勉強がすきでよく出来た少年は、
母子家庭でお母さんがお前は中学を出たら炭鉱夫になれ、この街にいれば食いっぱぐれることはない、
と進学を断念させます。
素直な少年は現実を受け入れますが、そのお母さんは少年が中学を卒業した日、男と街を出ます。
ひとりぼっちになった少年は賭博に恐喝と落ちていくのですが、ある日出会った老人に(金を巻き上げるつもりだった)、
運は貯めることができる、と諭され、
そこから変わって行きます。
賭博も酒もやめ、お金を貯めて街を出て、苦学して大学に入り、ある日、聞いたことのない訛りのある友達から渡された一冊の本に涙して、
青年の道が決まったのでした。
ある日を境に、彼はすべてを出版に賭ける決意をし、
酒もタバコもギャンブルもやめ、
ゴミを拾い、困っている人を手助けし、
貯めた運はすべて出版のために使いたいと。
「本が私を人間にしてくれたからです」
この見開きをみて、
ぶわっ、
と来ないひとがいるだろうか。
私は何度もここでぶわっときました。
で、そのあとに、社長さんの一代記を井上雄彦先生にマンガにしてもらったら、という企画書を出して先輩にパシッと頭をはたかれる黒沢さんでしたが。
この「本が私を人間にしてくれたからです」
っていい言葉ですよね。
後半はあるコミックを出版社の営業さんが仕掛けて売るエピソードですが、
(そういうとなにか無理やり売るみたいですが、いい本なので売りたい、というところからスタートしています)
その中でいまひとつ覇気のない営業の男性に、ぼくは頑張ってと言われるのが嫌いなんだ、
と言われた黒沢さんが、
私は嬉しいです、
頑張って頑張って喜んでもらおうって思います!
と、向日葵みたいなまっすぐ太陽を向いた顔でいう場面があり、
私もずっと、
頑張って、とか、頑張れ、という言葉が苦手で、これ以上頑張れない、とか、一緒に頑張ろうねならわかるけどさー、とネガティブに捉えていました。
でもマラソン大会に出るようになって、応援の力ってありがたいと素直に思えるようになって、
頑張って!
と言われると、
その言葉が背中を押してくれるようです。
社長の「本が私を人間にしてくれたからです」と一緒に、
ひとはなんで生きるのか?
と問いかけるようです。
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