岩手県民会館大ホールにて、劇団扉座の「アトムへの伝言」をみてきました。
盛岡は演劇が盛んな町でして、その気になれば毎日どこかでお芝居を見ることができるくらい。
でも、盛岡演劇鑑賞会に入らないと見られない公演があることに1年くらい前に気づき、
ずーっと棚上げにしてきたのが「くにこ」で思い切ってはいることに。
「アトムへの伝言」、もちろん盛岡演劇鑑賞会の会員は見にきているのですが、
もっと多くのひとに見せたいなあと思ったり。
「アトムへの伝言」は、ヒューマノイド型ロボット「カッパ」と、
彼が弟子入りしした伝説の漫才師「海老乃ラッパ」の漫才シーンで笑わせて笑わせて笑わせてくれる。
「ちーっとも痛くなーい」
でブレイクしたラッパは、相方が落ちぶれて自殺にちかいやり方でこの世を去ってから、
ずっとその伝説の芸を封印してきた。
が、
森の里研究所が開発した「カッパ」(最初は本当にカッパみたいなヒューマノイドだった)が腐っていたラッパの芸人魂に火をつけた!
素直でラッパのいうことはなんでも聞き、過去の台本もネタ帳もすべて頭にいれているカッパに、
ラッパも本腰をいれて漫才に打ち込む。
しかし、
落ち目のラッパを捨てて出て行った若い芸人が、
押し問答のはてにラッパに危害を加えそうになり、
かばって相手を殴ってしまったカッパは、博士の怒りを買い、壊されることに。
博士はダイナマイトを発明したノーベルよろしく、
自分の発明が戦争に利用されたことで苦しみ、人を笑わせる平和な世界のためのロボットをつくりたかったので…。
研究所員たちもラッパも沈鬱な表情を浮かべ、うなだれるその時、
ラッパが地獄のような芸人魂で、ある提案をする。
その提案とは、
カッパに地雷を踏ませ、地雷反対キャンペーンとしてTVで放映することだった。
博士の希望どおりカッパを木っ端微塵にし、悲惨な地雷の被害を一目瞭然で視聴者に伝えられるじゃないか。
カッパを誰よりも生かしておきたいのはラッパなのにこの提案。
まるで芥川龍之介の「地獄変」のよう。ちがうか(笑)。
カッパの最後の晴れ舞台。いまやすっかりスタイリッシュになったきらびやかなカッパと、相方との壮絶な別れをまったく感じさせないラッパとの漫才がはじまった。
そしてついに、ラッパは地雷を踏み、
「ちーっとも痛くなーい!」
とパッと輝く笑顔を一瞬みせて舞台は暗転、
高いところからキラキラ輝くカッパの破片が降りかかり、
研究所員たちもラッパも、泡になって天国に登って行った人魚姫のようなカッパを思うのであった…
劇中の漫才では腹を抱えて笑い、落ち目だったラッパの名台詞の数々に胸がすき、
(落ち目でも芸人としての誇りと信念は超一流。かっこいい)
これから二人の快進撃がはじまるのか?とワクワクしていたら、
壮絶な最後になり、笑っていた顔をどこへ持って行けばいいのか、
と不安な気持ちに襲われたり、やはり見ていても可愛いカッパの不条理な最期に泣きそうになったり、
でも芝居としてはこの終わりじゃなきゃつまらねえよなあ、とも思った。
ゲラゲラ笑うばかりがおもしろさではなくて、自分のなかにあった複雑に絡み合った感情を引きずり出される快感というのもおもしろさのうちではないかと。
終演後のロビー交流会で、あの終わらせ方について質問したら、
中には泣きながら詰め寄って抗議したお客さんもいたそうで、
カッパのあまりに純粋でけなげなヒューマノイド型ロボット造形がうまくいきすぎたゆえんでしょう。
盛岡演劇鑑賞会ではほぼ毎回、出演者や脚本の方などとのロビー交流会があるのですが、
脚本舞台監督の横内さんと伝説の漫才師ラッパを演じた六角さん、研究所員の岡森さんがおなじ高校の先輩後輩で、
大学からずっと30年おなじ劇団をやってきているということに驚きました。
横内さんはほっそりして手足が長い、女形をやったらぴったりなのではという姿の方で、質問や感想に真摯に答えながらもユーモアがあり、
六角さんは舞台が終わって疲れていたと思うのにロビー交流会に出てくれて、
舞台では伝説の漫才師ラッパとして大きくみえていたのに、
実際には赤ちゃんのような瑞々しい皮膚と、小学生のような童顔の方だった。岡森さんが役者さんだけあって整った顔立ちではありつつも普通に中年の方なので、
六角さんの赤ちゃんみたいな容姿に不意をつかれてしまった。本にサインをしていただいて、間近でお顔を拝見してドキドキしたくらいであります。
まだまだ書きたいことはありますが、
盛岡演劇鑑賞会に入っててよかったーーーー!!!
ではでは☆
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