シネマ歌舞伎を見る前に読もうと思っていたんだけど、
帰ってから読んじゃった(笑)。
去年、歌舞伎を花道近くのいい席で見て、
その後サントリー美術館の「歌舞伎 江戸の芝居小屋」を見て、
だんだん歌舞伎に親しみを感じてきたところで、
香川照之さんのこの本が目に入り。
香川照之さんは「トウキョウソナタ」、「OUT」「あしたのジョー」「ひみつのアッコちゃん」にも出ていたし、興味のある役者さんだったので。
なぜ歌舞伎の襲名をしたのか、全然事情も知らなかったので、
浜木綿子の息子だったというのもはじめて知った。
息子の立場から書いた本だから、お母さんの側からしたら、
まるっきり反対かもしれないなあ。
母の実家は出戻りの次女である母、夫を自分の実家に引き入れた長女(とその夫と子ども)、独身の三女がいて、
娘三人が手元にいることを喜んでいる祖父母がいた。
女系家族ここに極まれりの感があるが、照之さんにとって居心地の悪い、
人生の指針を照らすひとのいない家だった。
この女系家族に対する嫌悪感が歌舞伎の襲名への道につながったのかなあと思える。
歌舞伎は男の世界だから、母や女の世界から、父のいる男の世界へ入ってバランスを取りたかったのではないか。
母の実家への筆は容赦ないが、役者や歌舞伎のことだけではなく、
人としてどう生きるか、正しい道はどこにあるのか、
という求道者を感じさせる文章で、思っていたとおり、いっぱい考えて生きてきたひとなんだなあと思った。
歌舞伎のことは全然わからないので、香川照之さんくらいの距離のひとが描いたものの方がすんなり入ってくる気がして、
ことに襲名ということの重みや大変さや、具体的にどういうものなのかが伝わった気がする。
2013年5月17日刊行でした。
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