鹿賀丈史のシラノ、でした!
どこかに軽やかさがあって、トホホと頭を掻きながら、颯爽としている感じ。
百人の敵でも物ともせず、相手が誰でも舌鋒鋭く、文学的な才能も人気もありながら、
どこか破滅的な生き方。
つまらない舞台を主演男優をこき下ろして台無しにし、
詫びに袋に入った金子をどっと気前良く渡す気風のよさ。でもそれがじつは生活費なのでその後一ヶ月どうやって食う気だ(笑)。
文学的才能も人も羨む強気な性格も、リーダーシップも剣の腕前も、
彼の目の前につねにぶら下がっている巨大な鼻があるかぎり、
シラノを天真爛漫な男にはしないらしい。
彼が愛するのは月だ。
果てしない劣等感と自分を恃む気持ちのあいだに、
密かに愛する従妹のロクサーヌがいる。
Wキャストで私が出会ったロクサーヌは濱田めぐみさんでした。
美貌と美声と、笑顔が武器なの!と叫んでもそれが嫌味にならない愛くるしさ。
一転して夫クリスチャンの喪に服してからの悲しみにやつれた風情もよかった。
私はずっと「シラノ」にはお菓子屋ラグノォ(森茉莉からの引用だとこういう表記)が気になっていたんですが、
光枝明彦さんのラグノーを見て、これは印象に残る役だな、と。
森茉莉がなぜシラノなのにお菓子屋さんのシーンをよく覚えているのか不思議だったんですが、
演出なのかもしれませんが、
お菓子屋さんと言いながら肉もお菓子もパンもあり、
シラノの友人で、ついには戦場にロクサーヌ(ロクサーヌもけっこうやる!)と共に、
疲弊した兵士たちに食糧を届けるいい親父なんですよ。
ラグノーのお店のセットがまたよくて、天井からぶら下がっている巨大な肉塊や、
昔のパン焼きの竈も、歌い踊るお店のスタッフも楽しかった。
かっこいい場面も哀切な歌も、照明も書ききれないくらい。
ではでは☆
iPhoneからの投稿