きのう岩手県民会館で観た「ミス・サイゴン」。
パンフレットと一緒に、市村正親さんのこの本も買いました。
「ステーキの横のクレソン」(朝日新聞出版)
私は自分がこんなあっさりした顔のせいか、
目のぱっちりした濃い顔立ちのひとに憧れる。濃い顔のひとって、ハキハキした印象で明るくラテンのノリで、
と思っていましたが、
市村さんの自己分析は、濃い顔立ちだけど陽ではなく陰の顔立ちで、
主役をはれるタイプじゃないという。
タイトルの由来は浅利慶太さんが言った、お前はステーキの横のクレソンだ、
から。
主役のステーキじゃない、でもステーキにクレソンは欠かせない。
川越で育った子ども時代のエピソードですきなのは、小料理屋を営むお母さんと、月刊のローカル紙をひとりでやっていたお父さんが仲が良くて、
お母さんの小料理屋でお父さんが飲んでいて、子どもの市村さんはその情景が自慢だったりしたこと。
ふたりとも働いているし、当時は珍しいひとりっ子だったから周りに勝手に可哀想がられたこともあったそうだが、
ひとりで川越から池袋まで電車で行って、改札をくぐることなくそのまま川越まで戻ってくるというのもお気に入りの過ごし方だった。
なんとなくそのひとりでいて楽しい感じはよくわかるなあ。私は一人っ子ではないし家族も多かったけれど、
天井裏(天井裏部屋じゃなくて、梁に煤がぶらさがっている天井裏です)にいたり、
森の中で何時間もいたりしたので。
役者としての市村正親さんのデビューは早い方ではないけれど、水戸黄門で知られる西村晃さんの付き人時代があったことも本書で知った。
また、役者としての自分の体づくりについても多くページをさかれていて、
10代からバレエをやっていて、踊れることが僕の強み、という市村さんも、
50代で膝を痛めてからはウォーミングアップにストレッチだけではなく、
スクワットも取り入れたそうで、
筋肉は天然の、自前のサポーターだという言葉には膝が抜けるほどバンバン叩いたね。
60歳を迎えてからは体型を整えるためにバレエも再開したという。
12、3年ぶりのバレエはオープンクラスではじめは体が思うように動かず、滑稽だったかもしれない、
と述懐しながらも、
なにかをするときには恥ずかしいなんて気持ちは捨てるに限る、恥をかけなくなったらおしまいだ、
という言葉にも激しく同感。
去年の2月に走り始めた時はなにもわからず、ダウンコートのままで首にタオルを巻いて走り、
ふつうの綿のTシャツだったから汗をぼたぼた流して、
客観的にみたらカッコ悪かっただろうなあ。
でも!!
何かをやる時に恥ずかしいなんてイラネ、ですよ。
華やかなひと、と思いながらもそれだけなら惹かれるものはないから、
こういう努力を隠さない正々堂々が役の向こうに透けてみえるから惹かれるのかもしれない。
付き人時代に大御所の先生たちから様々な言葉をもらった市村さんですが、
「役を一生懸命生きると仮面が透けて中の役者の顔が出てくる」という浅利慶太さんの言葉は役者じゃない自分にも効いた感じです。
舞台写真が多い本書ですが、サウナスーツでバーでバレエの基本ポジションのストレッチをしている市村さんもすてきでした。
また、奥さんが篠原涼子さんということもじつは忘れていて(聞いた記憶はある)、
父として、夫としての市村さんもチャーミングでした。
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