映画「大奥~永遠~右衛門佐・綱吉篇」。
細かいことをいうようですが、男女逆転大奥なのに、
身分順じゃなくて、男女順なのね(笑)。
原作のなかでここが見所だなあと思っていた、
「牧野成貞一家破綻」は原作以上でした。能舞台や将軍・綱吉を送り迎えする行列など、
原作の世界を丁寧に作り上げている感じがして、わりにすぐ牧野成貞の話にきたので、
おおっという感じ。このエピソード綱吉の毒気たっぷですよ。
母上のようですきだった、という御用人の牧野成貞の、なぜ夫の阿久里(榎本孝明!納得のキャスティング)を召し出せということになるのか。
将軍になるまえの綱吉と関係があったにしても、もう立派な中年なのになぜ。
すきな成貞の夫だからこそ抱いて成貞を苦しめたかったのか。さらに成貞の息子(嫁がすでにいる)にまで毒手が。
この場面の菅野美穂の太い感じがよかったなあ。毒のある肉の花って感じ。
それから、衆道の仲の男をふたり夜伽に命じて、目の前で睦み合うてみよ、と命ずる場面。
原作でもここの綱吉の剥き出しな感じがすきだった。
あまりのことに耐えかね自刃しようと刀に手をかけた男を右衛門佐が一喝。
その後綱吉を諌めるのですが、ここの場面は原作そのままではなく、
やや長く撮られていたんですが、綱吉の、
「将軍とはもっとも賤しい女のことじゃ」
と自嘲し、
「松姫なぜひとり死んだ」
と涙を流す流れはよかった。これだけは原作通りに言ってくれ、と思っていた綱吉のセリフを、
アレンジすることなく言わせていて、これだよ、このセリフを聞きたかったんだよ~と。
菅野美穂、20代~30歳そこそこの若い娘さんみたいな雰囲気ですが、35歳だったのですね。
まだ少女の頃の綱吉(徳子)が「幼顔で目ばかり大きゅうて」とため息をつく場面が原作にもありましたが、
菅野美穂の顔立ちもまさしくそうで。
最後に、すでに60歳前後と思われるのに、いまだに父・桂昌院の呪縛から解かれていず、
総触れに現れた綱吉(菅野美穂)を見た時、
映画だし、これが限界じゃ、とある意味ホッとした。原作ではいまだったら80歳くらいの老け込みようで描かれていたから…。
桂昌院役の西田敏行もよかったなあ。可愛いんですよ、この我が娘だけが可愛いおじいちゃん。
可愛い娘徳子が世継ぎを産めないのは、自分が少年時代、敬愛する有功のために計らって子猫を殺したためだ、
と思いつめ生類憐みの令を綱吉に出させる。綱吉は本来勉強好きで賢明な将軍にもなれたはずなのに、
世継ぎを産めないことで自暴自棄に陥って行く。
世継ぎを産めなくても、名君と名高い甲府宰相・綱豊に継がせれば、
という考えは断固として桂昌院が認めない。
この雁字搦めにされて、自分の体を汚し辱める夜毎の行為に溺れるふりをするしかない綱吉に最期を迫ったのは、
夜伽に選んだ若者が喉元に刃物を突きつけた時。
自分の婚約者を野犬に食い殺された男が、吠えるようにして綱吉にぶちまける民の怨嗟。
このあとの場面は原作を大切に作られていてよかった。
菅野美穂も右衛門佐もまだ瑞々しさを失う直前くらいの老けさせ方だったし。
しかし、
父桂昌院についに意見して、重荷から解放された綱吉がぴょんぴょん跳ねるみたいにして右衛門佐に逢いにいこうとするところは、
…いくらなんでも若すぎやろ(笑)。
映画のラストシーンはここで切ったか、という鮮やかな場面でした。
そのあとに続く綱吉の最期を描かずよかった。そこまで描くと映画のテーマがぼやけるもんね。
綱吉とまだ部屋住みだったころの吉宗の一度きりの邂逅場面がマンガではすきだったのですが、
こちらもなかった。でもこれ以上長くできないもんね。
衣裳は小川久美子さん。
いいな、と思っていると小川久美子さんだったということがあり、名前を覚えました(笑)。
桂昌院の袈裟の極彩色の派手さが最高でした。
パンフレットは以前は買わずにその分で違う映画を見る方がいい、
と思っていたんですが、せっかく見た映画を隅々まで味わいたいからパンフレットを買う、方向に。
美術がよくて、私ははじめて美術展でみてきた襖絵や屏風の使い所がわかったよ(笑)。
タイトルロールも最後まで見るんだけど、パンフレットでいちばんよく読むのは制作スタッフキャストがどーーーっと出ている最後のページ。
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