予告を観た時から、これは見逃せない、
と思っていましたが、
反面、
も、もしも世評は高くても私にはイマイチだったら?
と一抹の不安も。
しかしそんな不安はオープニングの3分でぶっ飛びました(笑)。
予告を観ててっきり大金持ちで車椅子の紳士は余命幾ばくもなく、
最後に黒人介護士の青年に、やけくそで高級車を駆って旅に出て、
その果てに死ぬのかな…
と勝手に物語を完結させていました。
フィリップ(眉毛が東北っぽいジェントルマン)が死ななくてほんとに良かった。
広いお屋敷でフィリップの世話をするのはドリス(雇われたスラム街の青年)だけではなく、
屋敷の一切を取り仕切っているイヴォンヌ、謎めいた美しい秘書・マガリー(その謎めいた謎の正体もフランスっぽい)、介護の同僚?マルセル。
ほかにもイヴォンヌがすきな庭師やコックや出入りがあるんですが、
この屋敷にもともといた3人の女性は、一見粗野なドリスの本質を理解していて、互いにからかい合いながらも敬意があって平等なのがよかった。
ドリスは最初からフィリップに対して障害者と見下すことも恐れることもなく、
フィリップの言葉を借りれば「容赦ない」。
お菓子をつまんでいたドリスに、それ、自分にもちょっとくれ、というようなことをフィリップが言うと、
「ダメ。これは健常者用だから」
とブラックジョークを。キツイ用に聞こえますが、首から下は麻痺している障害者、と、なにかから隔離するような言葉やふるまいはドリスにはないのです。
物語の終わりの方でドリスを失い、新しい介護士たちを頑なに拒んだあげくヒゲぼうぼうになったフィリップの髭剃りで遊ぶドリスもよかった。
あの独裁者のちょび髭にしてからかうあたりはヒヤヒヤしながらも、こういうのがフランスの映画なのかなあと思ったり。
けっこう、ヒヤッとするセリフがあったのですが、ふだん、無意識に必要以上のタブーに縛られてしまっているのかもしれないなあと省みたりもしました。
言葉も態度も粗野で下品で暴力的でもあるドリスが、
フィリップの介護をするうちに、絵を描いてみたいという衝動に駆られ、
一枚の絵を描きあげます。
すべてが名場面で名台詞ですが、この絵を描いているドリスの部屋にいきなりやってきて嘲笑ったフィリップの養女への毅然とした態度と、
そのあとフィリップの部屋に行って、躾をちゃんとしろ、という場面もよかった。
ふざけたり冗談を言ったりしていても、人が人を見下すことへの怒りと、それをそのままにしておかない潔癖さを感じました
その養女の女の子はまだ十代で、お金持ちのお嬢さんとしていい気になっていたんですが、そのあとの彼女との関わり方をみると、
ドリスの母性本能というか、面倒見のよさを感じます。
ドリス、なんていいやつだ。
紆余曲折あって、ドリスが屋敷を去ってほかに勤め先をみつけることになったときの面接。
面接をする雇い主の女性に、壁にかけてあるダリの絵について語り、
言葉が頭韻を踏んでいる、
とチャーミングな表情で伝えます。
もともと持っていたドリスのよさがフィリップによって育てられていたんですね。
フィリップも金持ちだし大人だし頭もいいし、きっといつでも間違った選択はしないだろうと思っていたのですが、
素姓を隠して文通していた女性に、どうしても本当のことを言えず、デートから逃げ出したりします。
ふたりの関わりはどっちも助け助けられているのです。
冒頭の高速ドライブの果てに警察に捕まった場面でも、フィリップがドリスを助け、ふたりはご機嫌でパトカー(なのか?)に先導させて病院へ。
(もちろん病院になんて用はないんだけど)
どの場面も、人物もよかったなあ。
音楽も。
特にフィリップの誕生日で楽団がコーヒーのCMに使われているクラシック音楽を奏で、
最後には屋敷ではたらいている全員が楽団の音楽に乗って踊り出すんです。
ここはきょう誕生日なもので、
ああ、きょう「のぼうの城」じゃなくて大正解!!
(「のぼうの城」も観に行きたいのですが、誕生日でお殿様が腰元とマツケンサンバ、はないでしょうさすがに)
「最強のふたり」の最後の方で、実際の「ふたり」が映し出され、そのさりげない感じもよかったです。
あー、誕生日にいい映画をみたなあ。
ではでは☆
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