「大奥」8巻、起承転結でいうところの、転でしょうか。
今回は物語が大きく転回した感じを受けました。
八代将軍吉宗がついにその生涯を閉じたのですが、
若い頃、自分は人の心の機微に疎いところがある、
と自覚なさっていたお方が、
母親として、また主君としてみせた顔がよかった。
7巻の最後に登場した9代将軍家重。
次女の宗武の聡明さ、美しさ、要領の良さとは対照的に、生まれながら体が思うように動かせず、
言葉も呂律がまわらない、一方で酒色には人一倍盛ん。
しかし、
その家重にこそ将軍の器がありと吉宗は見るのですね。
母である吉宗に拝謁できる数少ない機会である、元旦の席で大勢の家臣たちも見ている中で、
漢詩をそらんじる宗武と、吉宗に言葉をうまく返すさえできず、挙句粗相をしてしまう家重。
その家重の部屋を訪ねた吉宗は、母親として将軍として、
家重をしっかり抱きしめ励まし、
次の将軍はおまえだと手を握りしめるのです。
しかし、この感動的な絵の上に、
クールな四角い吹き出し(でいいのでしょうか?)に、
「将軍の座に就いた後も酒色に溺れ
無能な将軍としてその一生を終えた」
と書いてしまうところがまた鮮やかなのです。
吉宗が部屋住みの木綿の着物をきていた時代からずっと腹心の臣下だった久通。
その大福のようなやわらかな面立ちとは裏腹に、
わが君吉宗を将軍にするために彼女がしてきたことは…。
少女時代の吉宗と久通、青年期のふたり、晩年のふたり。
3代家光から9代家重までの将軍たちのなかでいちばん近代的な(とみえる)吉宗が私はすきでしたが、
この巻では吉宗を味わいつくした気がします。
この巻の構成も、舌を巻くうまさでした。
9巻は12月発売ということで、それまで予習復習をして待ちたいと思います。
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