「夢売るふたり」、予定調和をことごとく壊しますなあ(笑)。
そういう物語だからというのもあるんでしょうが、
阿部サダヲが可愛かったです。松たか子がだんだん、夜叉じみていくのとは逆に、
結婚詐欺をしている張本人の阿部サダヲはどんどん天使みたいにピュアになっていく。
騙される女性たちの中でも、ウェイトリフティング選手のひとみさんがいちばんすきなキャラクターなのですが、
(ほんとうにリフィティングの選手かと思ったら、オーディションで選ばれてから4ヶ月ウェイトリフティングの特訓をしたそうです)
彼女をめぐる、松たか子の醜い言葉の数かずと、
それとは対照的な阿部サダヲの清らかな発言。
でも、
元はといえばあんたじゃん!
あんたが火事を起こして、店の常連だった女の客と寝て金を貰ったところから歯車が狂ったんじゃん!
とは松たか子は言いませんが、生理ナプキンをパンツに貼ってはく場面とか、
どんどん荒んだ雰囲気がにじんでいく。
ふたりの店が火事でダメになったあと、笑顔で夫を盛り立て、ラーメン屋のアルバイトに出て、
できたいい女房だったのに。
女も変わるし、男も変わるし、ふたりに騙された女たちの人生も変わる。
でも、騙された女たちがまるであの金はお賽銭でもあったかのように、
一皮剥けて、いい方向にあるきだすのがよかった。
ウェイトリフティングのひとみも、結婚願望にがんじがらめのOLも、男に騙されっぱなしの人生を送ってきたらしい売春婦も。
最後、
あのふたりにあるのはそれぞれの人生なのか、
もう一度一緒になるための希望なのか。
ロケ地に氷見市とあり、また氷見か!と喜ぶ私でした。氷見市はちいさな町ですが、そのわりに映画の舞台になることの多いまちのような気がします。
氷見の漁港でフォークリフトを操作する松たか子と、
いろいろあった末に傷害罪で刑務所に入れられた阿部サダヲ。
阿部サダヲはシャバでの板前という職業柄、厨房で働いているのですが、
ふと、
カモメの声を聞いたような気がして、作業中にぼーっとしたら忽ち叱られると思うのですが、立ち尽くします。
そのあとに松が漁港でフォークリフトを操作している場面になるのですが、
ふたりは離れていても、心が通じあっているととればいいのか、
失われた絆へのレクイエムととるのか。
いろんな解釈ができそうですが、
映画のおもしろさを堪能できた映画でした。
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