「佐野洋子対談集 人生のきほん」
佐野洋子 西原理恵子 リリー・フランキー (講談社) 2011年
この本は前半が佐野洋子と西原理恵子の対談、
後半が佐野洋子とリリー・フランキー。
西原理恵子との対談は2007年7月10日。
同年3月に西原さんは夫・鴨志田さんを見送っており、
佐野さんはガン余命を医師に確認して緑のジャガーを買ったあとだった。
と書いてしまうとなにか、沈痛な対談がはじまってしまう気がするが、もちろんそんなことはない。
西原さんの「毎日かあさん」には子供達に絵本を読み聞かせるところがよく出てくるが、
対談の最初は
「一00万回生きたねこ」からだった。
はじめてこの絵本にであったのは中学になるころで、何回死んでもぜんぜん平気、飼い主に可愛がられても自分は飼い主をすきじゃない、という主人公のねこに共感したけど、
肝心の結末はぜんぜんわからなかった、
子どもを産んではじめてあのねこがしあわせに死にました、という結末がストンと落ちた、
という部分がすごく勉強になりました(笑)。
佐野洋子さんの絵本もエッセイの文章も私はすごく好きなのですが、
好きなので、わからないとか考えたことがなかったなあ。
そう、図書館ボランティアの読み聞かせでも、佐野洋子の絵本は絵本としてはいいが、
読み聞かせには難しいのでは、という話が出たこともあり、
その時もなんで?とぽかんと思っていました。
ふたりにはおなじ武蔵野美術大学出身、離婚、子ども、と共通する話がいくつもあり、
その内容も言葉も深くておかしい。深いのに深刻ぶってないんですね。
リリー・フランキーとの対談は「東京タワー オカンとボクと、時々、オトン」を読んだ佐野さんからのラブコールから実現した対談で、
最初は母と娘、母と息子の関係から話ははじまり、
「あなたみたいにお母さんと情でつながっているのが、ものすごく羨ましい」という佐野さんですが、
「シズコさん」でも描かれていたホームに入ってからどんどんぼけて、おもしろくて優しいひとになっていくお母さんの話も楽しげにするんですね。
で、リリーさんから、息子さんとの関係は?と聞かれると、
息子は可愛かった、こんなに子供はこんなに可愛いのに、どうしてお母さんは私に冷たかったんだろうと思ったくらい、
という返事で。
いろんな話題が出て来る対談集ですが、
家族、親子、夫婦、死ぬこと、老いることについて興味深く読みました。
対談のはじまりが「100万回生きたねこ」だったことは偶然だったと思いますが、
読み終わったらまた最初の、何回生まれ変わっても、飼い主にどんなに愛されてもなにも感じなかったねこが、
はじめて愛した白いねこの亡骸を抱いて泣いて、
それからしあわせに死にました。
という終わりに重なる気がしました。
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