水木しげるの絵で「遠野物語」。
なぜいままでなかったのかが不思議なくらいです。
「ゲゲゲの鬼太郎」のなかでも「かくれ里」の話が
すきというか、印象に残っていたのですが、
「寒戸の婆」はまさにかくれ里のヴァリエーションではないでしょうか。
この「水木しげるの遠野物語」は一コマ一コマが丁寧に描かれていて、
これは変わった石があるというので見に行った話なのですが、
この石の描き方が妖気漂うとはこのことか、という感じがします。
点描なのかなあ。
人物はあくまでもマンガチックに省略された線で、背景は芸術的と思えるほどの緻密さで、
というこのコントラストもまた凄いものがあります。
水木サンが柳田國男さんのご子息の
お嫁さんで舎主である、柳田富美子さんに招かれて、
柳田山荘で語らう場面もよかった。
88歳になるんですわ、という水木さんに対し、
「ホホホホホ 私は90歳ですの」という富美子さんに
フハッとなる水木さん。
そこへ、
「遠野物語」の作者である柳田國男さんが現れ、
ふたりは妖怪談義を交わすのでした。
この作品は遠野物語をマンガにしたものですが、
それぞれの物語の作中、または最後のコマに水木サンが登場し、
感想を述べたりしています。
最終話は「遠野の獅子踊り」。
一瞬、「鹿踊り」(ししおどり)?と思いましたが、
ネットで検索してみたところ、
その勇壮でダイナミックな踊りから「獅子」の表記になっているようです。
(「しし踊り」の表記も見受けました)
水木サンは遠野の取材に訪れた際に、実際にこの獅子踊りもみて、
自分は前世、遠野に存在していたのではないか、と淡く思うのでした。
遠野散策ガイドも読み応えがありました。
水木しげるのマンガはちくま文庫などで集めていたのですが、
このサイズの本だと、丁寧に書き込まれた背景も含めて味わえていいなあと
思った私です。