ところでプロフィールのどっこにもそんなことは書かれていませんが、
稲泉さんのお母さんは久田惠さんです。
たぶん、稲泉さんはお母さんが書く人だから自分もおなじ
道に入ったと憶されるのがやなんだろう、と思うけれど、
「人生案内」(読売新聞の悩み相談)の回答者だった
久田さんとどこか重なるところをつい探してしまうのだった。
僕ら、
というタイトルのとおり、
登場するのは稲泉さんと同世代の20代前半の若者たち。
稲泉さん自身も高一で中退し、その後大検を受けて
大学に入っているので、
(本書を書いている時点では大学在学中)
ひきこもりだった青年や音楽がやりたくてフリーターをやっている青年、
旅に出ているときだけ輝ける青年、営業職への疑問をもちながら辞めたいと思っている青年など
みなどこか稲泉さんの細胞の一部を培養してつくられたような、重なる部分を持ち合わせています。
自分が置いてきた一部分と語り合うことで、稲泉さん自身も迷いの森を
抜けようとあがいていたのかもしれないし、共感しあう時間を持ちたかったのかもしれない。
10年後のいま彼らはどういう道をあるいているのだろう。
(この本は2001年発行です)