「大奥」以来、ひさしぶりに買ったよしながふみです。
だっていっぺんに全部読んでしまったら、さきの楽しみが
なくなるじゃないですか。そんなバンバン描くタイプの作家でもないし。
おもしろいだろうなーと思ってましたが、
やっぱりおもしろかったです。
父子家庭のよくできた息子と理想的なお父さん。
ですが、
のっけから中1の息子が、同級生の女の子を妊娠させてしまったかも、
と白状にきます。あ、和服をきているお父さんは作家です。
で、幸い女の子は妊娠してなかったのですが、
それからやっぱりまずくなったのか、自然消滅して
いまは中三になった息子が、
つい、友達に負けたくない気持ちで、
俺なんか中一で体験しちゃったよ、相手は~
と言ったところにとうの本人が。
あとで謝る機会に恵まれるのですが、
彼女は、いいよ、あたしも同じことをしたし、というんですね。
このショートボブの女の子が清潔感があって
慧いんだよなあ。こういう女の子すてきだなあ。
よしながふみのマンガにはときどき、ボーイッシュとも限らないのですが、
さっぱりしていて潔い、凛とした女の子や女の人が登場して、
私は彼女たちがすきなのですが、「大奥」の吉宗なんかもそうです。
それから「彼は花園で夢を見る」のラウリーヌ。
一見冷たく感情を持たないように見える彼女が
城のまわりに花のタネを蒔いて、城主である夫の
戦からの帰還を迎える場面がすてきでした。
彼女はふかく夫を愛していたのです。
報われなかったけれど。
男も女も、いいなあと思う人物ばっかり出てくる気がします。
「こどもの体温」」の息子の同級生でローザンヌに
行った彼は「バレエ王子」と呼ばれていました。
一度だけNHKでローザンヌのコンクールをみたことが
あるんですが、審査員の女性にものすごく辛辣なひとが
いたんですよー。彼女がモデルでしょうか。
「王子」の手がきれい、と褒めています。
どうしても母親と手をつなげなかった記憶を、
例の息子がきっとつなげるよ、と温めて溶かしてくれました。
バレエ王子はローザンヌで優勝し、きっとバレリーナの母親と
手をつなぐことができるでしょう。
一件、冷たく見えたり、変人にみえるような登場人物たちの
そんな柔らかな心の描写が心憎い。ああ、また読んでしまった。
描くより読むほうがはやいのに決まっているので、
書店やAmazonのページで逡巡しちゃっている私です。
あーつぎはまたインターバルをおかなきゃ…。



