大奥 2 吉宗の侠気 | 菅原初代オフィシャルブログ「魔女菅原のブログ」

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そりゃあ、原作がよしながふみだったら、女も侠気だ。



原作は昨日、映画から数時間遅れて読んだのですが、


まえに対談集でいっていた、「私はフェミニズムなんです」という

意味がわかったような気がします。


フェミニズムって、女権拡張主義者と訳されていたりもしますが、

違うと思う。女性の人権を尊重するようなことでは。


それはマンガの方がもっとくっきりしているのですが、


水野が大奥に入るにあたって、「祐之進(ゆうのしん)」という

名前を捨てろ(だったか忘れろだったか)と言われて、


これからは水野とだけ名乗るようにと申し渡される場面があるのですが、


それって、


いまだにあたりまえのようになされている、結婚と同時にそれまでの

姓を捨てて夫の姓を名乗らされているいまの女性とおなじですよね。


こうやって言葉にすると、野暮ったくなるのですが、


大奥の男女逆転の世界も、だからとってフェミニズムの精神にあふれているかといえば、

そうでもないです。


男にとって苦しい世界が、女にとって安らぐ世界なわけがないのでした。



さて話がずれましたが、大奥ではずっと水野と名乗り、そう呼ばれていた水野(ややこしいな)が

最後に一度だけ自分の名前を口にする場面があります。



それは吉宗(柴咲コウ)のお内証さまとして、寝所にあがったときのこと。


吉宗の(実際はともかく、建前上)初めての相手をすることになった水野でしたが、

これが名誉なことばかりでもなかったのです。


お内証さまとは、女将軍の初めての相手をつとめるわけですから、

大切な方の身体に傷をつけるということにもなるわけで。


ということで、お内証さまは将軍様に寝所での手ほどきをしたあと、





処刑



されるのです。切腹ですらかなわない。ひどい。あまりにもひどい制度だ。



もちろん、吉宗もこの制度のことは知らず、骨のある男がいる、と思って

初夜の相手を命じただけでした。


吉宗は原作では不美人ということになっていますが、柴咲コウの吉宗は

目力全開だ。なにを言ってもコワイほどの目力だ。その吉宗が、水野の名前を聞いて、両親の健在を聞き、


心から水野にすまないと謝った後、水野がひとつだけ口にした願いを聞き入れるのです。


本来、寝所でのねだりごとはご法度なのですが、吉宗が


「今わの際の願いのひとつも叶えられず、なにが将軍ぞ!」



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言い放ったため、誰も何もできなくなったのです。


水野も侠気の男ですが、吉宗もまた侠気の女でした。



水野の願いは、



「お信と呼ばせてください」


ということでした。吉宗の女の名前は信(のぶ)でしたが、

じつは水野には幼なじみで、互いに惚れあっている女性がいたのでした。


その女性の名も、お信。


堀北真希が好演していました。爽やかできりっとしたお信でした。


武家と商家という身分の壁があって、どうしても心を伝えられなかった

お信を思って、せめて吉宗をお信と呼ぶことで冥土の土産にしたい…



計られたのです、むごい、あまりにもむごい、と水野のために憤る

部屋の世話係に、水野がいう、


「それ以上言わないでくれ、心が曇る」


という言葉も侠気でしょう。悔しさやこの世への未練や怒りも哀しみも、


すべてをぐっと堪えて、平静であろうとつとめる水野。



そもそも、吉宗が総触れ(そうぶれ)で水野を選んだのも、


吉宗が慣れない重い内掛けにけつまづいて転んだのを、

つい吹き出してしまった隣の男を庇って、



「某にございます」


と名乗り出たのがきっかけでした。


その男は吉宗が、誰が笑った!と厳しく誰何すると、ガタガタと震え、汗を流し、

もうこのままでは一目瞭然、というところで、


水野が代わりに罪を被ったんです。その男はべつに

面識もないし、たぶん、水野が選んだ黒の裃をあざ笑っていたやつだった

かもしれません。華やかな裃の中で水野の黒一色のなりは、田舎者だと

馬鹿にされるのですが、


水野のファッションセンスは江戸っ子の「粋」であって、

大奥の時代遅れのいまどきでいえば、「将軍さまに愛されファッション」とは

根本がちがいます。


(つづく)