映画のタイトルに「食べて」とあるので、かえって
期待してなかったんです。
じゃなんで観に行ったんだよって話ですが、
イタリアで食べて、
インドで祈って、
バリで恋に落ちる。
べつに恋に落ちたいわけじゃないし、祈りたいわけでもないんだが、
イタリアもインドも行ってみたい国だし、
バリはもう一度行きたい国だしー。
というわけで、映画で観光気分を味わいたかっただけかも。
いちばんすきなのはイタリアでの、「食べて」。
最初の脚本ではジュリア・ロバーツ演じる、エリザベス(リズ)の
たべるシーンはわずかだったんですって。
パンフレットのジュリア・ロバーツインタビューで
提案してたべまくるシーンを増やしてもらった、とあって、
わかってらっしゃる!と思ったなー。
映画のストーリーにはうーん、ちょっとわからないなあと思ったし、
イタリアにいくまでのシーンは退屈しちゃった。
が。
イタリアはよかった。
たべまくるのもそうだけど、気の合う仲間とおしゃべりしながら、
「イタリア語は手と口で話すんだ!」
という、気合いの入ったイタリア語会話指南。
「アメリカ人は快楽に罪悪感をかんじるのさ」
という、徹底的なアメリカ人批判を受け入れて、
たべまくるリズ。たべて、サッカーのゲームに興じて、
積極的に快楽の蜜に溺れている感じがみていて
気持ちよかった!
いかにもチーズがよーくのびそうな出来立てのピザをまえに
うかない顔の女友達が、太ったんだもの、というと、
「服を脱いだあなたをみて、男性が逃げたことがあるの?」
男なんて、女のヌードを観るだけで喜ぶんだから、体重が増えたって
気にしない!きょうはピザをたべて、そのあとサッカーに行くのよ!
とはげますリズ。そんでもってジーンズがきつくなり、
試着室でボーイフレンドに手伝わせて、
なんとかボタンを止めようと四苦八苦する場面は
喜劇的で楽しかったなー。
イタリア最後の日には、アメリカの感謝祭料理で
リズが手料理をふるまうんだが、
友達のひとりの男性(頭がうすくて、でっぱらで、チビなんだが、
一番生き生きしていて話すことがおもしろかった!)が
なんと、この期に及んで、七面鳥を解凍していなかった!
でも大丈夫!
夜中じゅうオーブンで焼いていて、朝っぱらからターキーの詰め物の
丸焼きをたべるという、まさしく、「食べて、」のイタリアに
ふさわしいお別れの朝のテーブルになったから(笑)。
イタリアはおもしろかったんですが、
時々さしはさまれる、リズが別れようとしている夫との過去のエピソードが
うざったかった。思い出すなよもう。
インドでは、打って変わって、禁欲的な暮らしぶり…
のはずですが、たべることは相変わらず、ガッツリのリズ。
そんな彼女にはなしかけてきたのが、テキサスのリチャード
(リチャード・ジェンキス)。
この男性との対話場面はほんとうによかった。
すべてを悟った様な、それでいて人間臭いこの男性が最後に語った自分の
許せない過去は重かった。
かつてアルコールによって家庭を失くした彼は、リズに自分を許せるまで
ここにいるんだ、とアドバイスし、
リズはついに、映画の冒頭で出てきたバリのクトゥのもとへ。
でもこの再会シーンで、すぐには思いださないんです、クトゥ。
私はこの老師もすきだったなあ。
映画のストーリー自体はむしろ苦手な部類なのに、
リズがみっつの国でいろんな人と出逢い、語り合う場面がとてもいいんだよねー。
こちらが「恋をして」のフェリペ。
私が観たかったのは、フェリペがリズに勇気を出して
(彼も奥さんとの離婚で傷ついていたのだった)
プロポーズする場面で、
400羽の鸚鵡とぼくたちしかいない島へ行こう、
と言うんだが、
その島こそみたかったよ!
一度はプロポーズを断るリズ。その気持ちはよーく解る。
たぶん、分かる。やっと精神のバランスが取れて、
生き生きとした笑顔になれたのに、もう一度結婚して
もし、バランスが崩れたら?
いまのままがいいのに。
というところじゃないかなー。
もちろん、最後はフェリペの求婚を受け入れ、
ふたりでボートにのって、その400羽の鸚鵡のいる島へいくんです。
ああ、みたかった。
400羽の鸚鵡の島。
もちろん、その場合私の頭に浮かんでいるのは、
若冲の「鸚鵡図」のあの白い鸚鵡なのだった。
そんでもって島は、田中一村の描く南国の植物がわんわんと生い茂っていてもらいたい。
違うと思うけどさ(笑)。




