どんどんどん。
「ドクター、急患ですっ！」
「なにっ！」
「なにものかに鋭利な刃物で下顎からざっくりと
切られ、重体のワニと」
「首を切断されたアナコンダです」
「む、これはひどい。だがしかし私に任せれば大丈夫だ。
すぐ手術にとりかかろう、針と糸を用意！」
「はいっ！」
「いかん、綿もかなり減っている状態だ。
ぬいぐるみの存在感を大きく左右すると言われている、
もこもこ感がなくなると大変だ。綿をつめてくれ。」
「はいっ、ドクター」
「よし、こっちのクランケ（患者）はなんとか一命を
とりとめたぞ。」
「つぎは…まったくの切断か。これは難しいことになったな。
だが大丈夫だ。
こちらの患者もだいぶ綿を抜かれているようだな」
「はい、まったくひどい事件で…」
「犯人は特定されているのか？」
「…それが、未成年者保護法によって保護されている7歳の
学童なんですよ」
「う。法の盲点を衝いてきたわけだ、許せんな」
「はい、まったく」
「ふう、難手術だったが、所要時間2分の世界記録をまた
更新してしまった」
「はい、ドクター。おめでとうございます」
「いいか、くれぐれも次の犠牲者が出ないよう、気をつけていてくれたまえ」
「はい」
「動機を聞いてなかったな」
「なんでもドクター（お母さん）がワニタばっかり可愛がるから、
だそうです…」
「困ったもんだ！」
（完）