「かくしてバンドは鳴りやまず」 井田真木子 (リトル・モア) 2002年
「井田真木子インタビュー」と「神取忍」インタビューは、まさに読みたかった
熱い部分だった。核心という言葉の文字通りの意味で、核心をつくインタビュー。
井田さんへのインタビューは「十四歳」と「同性愛者たち(文庫版では「もうひとつの
青春」と改題とある)」が中心だったのですが、
「十四歳」の最後の方で、自らの幼少時の性的被害について書いたことについての
井田さんの答えがめざましかった。
「カムアウトしなければならないものだったという同情」へは、
「私はそういう同情には値しない人間でして、本を作るためなら身を売る、
腕の一本でも二本でもどうぞというような人間ですので。
あるいは人も平気で裏切る。」
そのあとに、
「冗談の一つと思って聞き流していただければ幸いです」と結んでいるのですが、
私はこれは本気だと思います。なぜなら、その次の、井田真木子さんが亡くなってからの
インタビューで神取忍がこう、証言しているから。
「執念深いよ。ほんとにすごいよ。あの人って。なんかひとつのものを
やろうとするときのパワーっていうのかな、異常なくらいの力を出すじゃない。
そこまですることないじゃんてぐらい…略…そんなことしたら命縮めるよっていうところまで
自分を追い込むじゃない。そういうところ、すごいなあと思うよ」
また、インタビューをするひとが、
「われわれが井田さんの著書を読み継ぐようになったのは、『プロレス少女伝説』からでした。
あの決定的な一冊で井田さんのファンになり、そして同時に神取さんのファンにもなりました。」
と冒頭で語っているのですが、それ、まさしく私のことですから!と烈しく共感。
ってことは」多いのか私と同じく、あの本から神取忍のファンにもなったというひと。
井田さんが神取忍を深く理解し、彼女でなければ引き出せない言葉を引き出したのと同じように深く、
神取忍もまた、井田さんの本質を理解していたことがこのインタビューがよく伝えてくれます。
インタビューする井田さんと、される神取忍のあいだにあった、真剣勝負の気魄を想像し、
『プロレス少女伝説』の奇跡のような成立を茫然と思う私です。