ヘヴン 川上未映子 | 菅原初代オフィシャルブログ「魔女菅原のブログ」

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『ヘヴン』   川上未映子



中学生の主人公はクラスでいじめられています。


残酷に陰湿に。 



いじめているのは、優等生で顔立ちも整った、絵にかいたような

人気者のふたりとそのとりまきの男子。



少年が苛められている理由は、斜視。


外見がすべての中学生にとって、まさに格好の

標的だったのでしょう。



少年はもちろん、苛められていることを家族には言っていません。



ある日、少年の机に手紙が入っていて、最初は新手の苛めゲームかと

緊張するのですが、何通も手紙がたまったころ、


その名前を名のらない手紙の主が、会いませんか、と提案してきます。



待っていたのは、コジマという背の低い、髪のごわごわした少女。

彼女もまた、クラスの女子からはげしく苛められていました。



このコジマは不潔で貧乏、という理由で苛められているのですが、

コジマが不潔を選んでいるのは、工場が倒産して母親と離婚してしまった、


不器用で誠実な、いまも汚れた靴を買い替えることもできない貧乏の

まま働きつづけている父親への愛のしるしなのでした。



少年の眼をコジマはすきだと言いますが、二人の間にあるのは、

恋愛ではなく、もっと深い同士愛というものでした。



エスカレートするいじめの最後には、それまで別個に苛められていた二人が、

一緒に呼び出されて、思春期の少年少女にはもっとも残酷なゲームが

はじまってしまいます。


コジマを守ろうとする少年と、


強い雨に打たれながら、裸にされても微笑み、苛めの首魁たちを

おびえさせる、強いコジマ…。

 

なぜかクリムトの絵に降る、黄金の雨を連想してしまいました。



惨たらしく苛められていたコジマの微笑みの強さと、

それと引き換えに失われたなにものか…。


コジマはその後、少年と二度と会うことはなかったのですから…。




小説のすきな方におススメしたい本です。