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内気な子供だったので、本の世界に生きていました。
というわけで、アストリッド・リンドグレーンの「長くつしたのピッピ」に
夢中だった私がなりたかったのは、
冒険家。
どこをどう冒険する気かはわかりませんが、ピッピみたいに、
「漂流」したり、南の島に、そこの王様となっているはずの父親を
訪ねたりしてみたい!と思っていたわけです。
「漂流」にどうしてそんなに憧れたのかは分かりませんが、
猫がのるくらいなら浮かぶか、という箱舟を作ってみたりしたなあ。
うちの父親は南の島の王様じゃなかったんですけど(当然ですよね)、
大工だったし、子供たちがのこぎりや釘やそのほかをいじっても叱らなかったので。
むやみに怒鳴られ殴られていた気がしていましたが、
いまの私よりずっと寛大だったんだなあ…子をもって知る親の恩じゃ。
ピッピ以外にも、私の冒険魂?を刺激してくれる児童文学はたくさんありました。
「エルマーのぼうけん」。いま息子もすきな本ですが、でもって、その本は私が
自分のために買ったんですけどね。
ただしくは、エルマー・エレベーターは、物語の語り手の父親なのですが、
いつのまにか、「ぼくのとうさんのエルマー・エレベーターが…」という
書き出しは忘れられ、
読み手はエルマーのすぐそばにいって、その行動をワクワクしながら見守っている
ということになります。
私がいちばんはまったのは、「世界一かわいそうなりゅうのこども」が捕らえられ、
こきつかわれている「どうぶつじま」に行くために、エルマーがリュックサックに
詰め込んだもののリストですよ。
ピーナツバターとゼリーのサンドウィッチ、って、当時はイメージが掴めませんでしたが、
ジェリーって、葡萄ジャムのことなんですね。そんでもって、ピーナツバターと葡萄ジャムの
コンビネーションは、むこうではポピュラーなんですねー。
いや、ずっとものすごいサンドウィッチを想像してましたよ。
ピーナツバターは高いのでそうそう家にはなかったので、リンゴジャムのサンドウィッチを
作って、歯磨き粉や歯ブラシ、りぼん、輪ゴムといった、
エルマーのリュックを作ってはご満悦でした。
それになんの意味が!といまの私がみたら怒鳴りたくなると思う(笑)。
「ふうちゃんのだいりょこう」。ふうちゃんという女の子が、飼い猫が家出したのを
おっかけてアメリカまで飛行機に乗っていっちゃう、というようなスケールのでかい
(当時の私には)物語で、
このふうちゃんがバスケットにおにぎりをつめこんで、旅に出るので、私もなにかあると
バスケット(母の買い物かご)におにぎりを作ってふうちゃんのつもり…。
ブッキッシュな子供だったから、ふだんはてんで冴えないんですけど、
想像の中で、物語の主人公たちのような冒険に出かけるのがすきだった。
そんなわけで、冒険家になりたかったわけですが、
その後中学あたりで、現実的に、司書をめざすことになり、
まったく勉強ができない、空想のなかに生きているような子供時代が
終焉をつげたわけだ(笑)。
現実的な将来の夢ではなかったけれど、
ここではないどこかへ、という気持ちはいまでも変わらず
持ち続けている私なのでした。
みなさんは、子供の頃なにになりたかったですか?