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やっぱり、母が作ってくれた料理の数々が
やっぱり、母が作ってくれた料理の数々が
思い浮かびます。特別な日に作ってくれた料理もあれば、
日常によく出された好物もあり。
お赤飯。台所の外の土間みたいなところで、薪をくべて蒸かして
作ってくれていた。ピカピカの赤飯にゴマ塩をかけて、重箱じゃなくて、
お皿に盛ってたべた。
味付けご飯(加薬ご飯という言い方は料理の本で知った。うちでは
シンプルに味付けご飯と呼んでました)。
餃子。ま、これは平常に近いごちそう。母は中華料理店(といってもカツ丼も
オムライスもあるんだが)で長年パートをやっていたので、
餃子、中華丼、オムライス、親子丼、カツ丼、チャーハン、ラーメンは
あたりまえなんだが、お店で出しているのと変わらない味のものを作れたのだった。
とはいえ、母がなんでも美味しく作れたかというと、案外そうでもない。
母はなぜか、ご飯の炊き方が下手だった(笑)。これって、致命的
。

一方、私はぞんざいに水加減しても、うまく炊けちゃうので、祖父にそこだけは
よく褒められたんだが、あれはたぶん、母はひどい冷え症で通年しもやけ状態だったので、
手で水加減するのがうまくできなかったんじゃないだろうか。研ぐのも泡だて器でやっていたし。
そんな母なので、酢飯を作らせるとべたべたしちゃって、お世辞にも上手とはいえないんだ。
それなのに、なぜか、母は始終、酢飯を作るのだった。
ちらしずしとのり巻きが、ほんとうに始終食卓に出ていたなあ。
でもやっぱりシャリがべたべたしているうえに、包丁を一回ごとに濡れふきんで
拭く、ということをしないので、切り口もちょっと押しつぶされたみたいになっていて、
崩れてるんだ(笑)。
それなのに。
それなのに、私はごちそう、というと、母のその冴えないのり巻きが忘れられないのだった。
鮨めしは下手だったが、具の干瓢のあじつけはしっかり甘辛く、
高野豆腐や干しシイタケ、ニンジン、ほうれんそうなどと一緒に巻かれた
太巻きや、キュウリ(弟の好物(、梅干しのシソ、筋子、などの細巻き。
鮨飯の味加減だって、たいてい、ぼやぼやした味付けだったんだが、
すだれをきゅっきゅっと巻いている、割烹着姿の母を思い出すと、
おかーさーん、
と叫びたくなって困る。
私にとってごちそうとは、母が作ってくれた料理のことです。
お店の味に近い、餃子やチャーハン、ラーメンも美味しくて捨てがたいんですが、
もう一度たべられるなら、
あのちょっと不格好な、母ののり巻きがたべたい気がする。
というわけで、私にとってごちそう、とは、
母ののり巻きかなー。
みなさんにとって、ごちそうと言えば?