みなさんも身に覚えがあるでしょう、
ないとは言わせないよ。
引っ越しや煤払いにつきものの光景、
古い本や雑誌、昔だったら畳の下に敷いてあった古新聞(白い粉がはたいてあった…
あの白い粉ってなんなんだろう、ベーキングパウダーじゃないことだけは確かですが)
に読みふける…。
やったことのない人は、いないはずだ。
で、私も毎日(でもないが)片づけをコツコツやってはいるんですが、
その時間の半分は、古い本を読み返してしまって、くっそーー、また
時間を食いつぶしてしまった!!という失敗の連続です。
すきな作家のひとり、桐野夏生さんですが、なぜか手元にあるのは、
このエッセイ集だけです。実家にはもうすこしありますが、
いちばんすきな『OUT』は、手元に置いたら最後、という気がして
なかなか手に入れられない…。あまりに好きなひとと結婚したくないという
心理に近いものがあるかもー。
若いころは真夏か真冬が好きだった桐野さんは、
年齢とともに、「自然と戦う」ことが億劫になり、
夏の暑さがこたえるようになって、「敗北感」さえ
おぼえると記し、
「次は何が衰えるのだ、と考える自分がいる。
衰えが悲しいかと言えば、そうでもない。…当たり前のこととして
享受してきた体力や能力を徐々に失っていくのは
自然の成り行きだ。
しかも、衰弱は悪いことでもない。本当に失いたくないものとは
何か、ということを明確にするからである。
失いたくないものに気付いた人間は強く生きられる。
体力は秋でも、心は荒々しい真夏の太陽と同じである、
と言ったら、若い人は驚くだろうか。」
この「衰弱」というエッセイのなかに、
『魂萌え!』があり、『OUT』がある気がする。
また、エッセイ集全体に漲る、自分の目指すものはこうだ、
という、荒々しいほどの宣言の潔さに、私はほれぼれとし、
…つい手が御留守になっちゃったわけだ!
おっと、パンを焼いて来なきゃ。ではでは。