「カチカチ山の物語に於ける兎は少女、そうしてあの惨めな敗北を喫する
狸は、その兎の少女を恋している醜男。」
太宰がこう書き始めると、いかにも、そう思えてくるから凄い。
狸は、美少女の兎にさんざんいたぶられ、最期は無残にも
泥の舟で溺れ、櫂で頭を殴られ、
「惚れたが悪いか」がいまわの一言となったのでした。
太宰いわく、女性にはすべてこの無慈悲な兎が住んでいるし、
男性には、この善良な狸がいつも溺れかかって足掻いている、と。
ほんとうにうまいなあ。
「カチカチ山」を読んでから、絵本「しろいうさぎとくろいうさぎ」を読むと、
目をまあるくして、
「ねえ、そのこと、もっといっしょうけんめい、ねがってごらんなさいよ」と、
いうしろいうさぎが、ちょっと、怖くなってしまうんですが(笑)。
くろいうさぎの気持ちは分かっていて、もてあそんでいるかに思える…
言いだしたのは私の学生時代の友達ですが。
もうひとつ、溺れかかった狸が喚くのが、
「白状する。おあれは37なんだ。お前とは実際としが違いすぎるのだ。
年寄りを大事にしろ!敬老の心がけを忘れるな!」
という言葉。
もうじき、敬老の日ですなあ。
45歳の自分は、立派に年寄りなので、
自分で自分を大事にしようと思います(笑)。