トリイ・ヘイデンのそれまでの本が、彼女と
子どもたちのクラスの中から生まれたのに対し、
こちらはトリイが出逢った女性からきいた
実話がもとになっています。
たまたま、偶然なのですが、私はこの本を読む
直前、浦沢直樹の「MONSTER」を読んでいました。
当時住んでいた青森の図書館に全巻揃っていた
ので、話題になっていたのは、その数年前だったのですが、
私はいつも遅れる…。
偶然なんですけど、
どちらにも、子どもを取り上げらる、
または、選択させられるという、
酷い場面が出てきます。
「ソフィーの選択」を連想させられる場面ですが、
(でもじつは、その映画を見ていないのですが)
浦沢さんのマンガでは、双子の子どもたちは
死にはしない、のでした。
死ぬより、恐ろしいことがあるのでしたが。
主人公は戦争中に、生まれたばかりの赤ん坊を
奪われた少女の、娘レスリー。
ナチに赤ん坊を奪われたのは、ハンガリーの貴族の
血をひき、ブロンドと青い眼の母・マーラ。
当時ナチは純血主義を旗印に、選ばれた男女に子どもを
作らせていたのでした。
それまで一家の中心で、明るく、包容力のあった母親が、
戦時中の悪夢から、次第に心を病み、信じられない事件を引き起こしてしまう。
愛していた娘に、
「あんたは甘いのよ。毎日人に殴られるのがどんなものか、
犬も食べないようなものしか食べるものがないってことが、
どんなものだかわかってないのよ」
と、突然攻撃的になり、烈しく怒りをあらわにし、泣き叫ぶ…
…
最後の方で、父と娘が、愛すること、完全であること、嘘、
傷つくこと、などについて話し合うのですが、
父親が、
愛と完全さは関係のないものだ、
完全な人だからその見返りに愛するというものではない、
愛するというのは、ただその人を愛するのだよ、
とレスリーに語りかけるとこころが、深く心にしみました。
