梨木香歩 偕成社
作者の名前、苗字と名前から
一字ずつ取ると、
梨香で、りかになるなあー、
作者の自伝的作品かな?という
思惑は、
大ハズレでした(笑)。
みなさんは、
このひな壇のカヴァーと、「りか」という名前から、
正しくあの有名な少女人形を思い起こしましたか?
香山リカちゃん。でも、それも正解ではなく、
りかさん、というのは、主人公の少女が車で10分ほどの
処に離れてくらす祖母からもらった、
「きだてのいい」人形の名前です。
着せ替え人形ではなく、由緒正しき、
おかっぱの市松人形。
この「りかさん」は、人形の心も人の心も分かる、
聡明な人形なのですが、
「アビゲイルの巻」は、怖かった。
親善大使としてアメリカから小学校に贈られてきた、
ビスクドールのアビゲイル。
小学生たちから愛されていたのですが、太平洋戦争
開戦。
そして、「愛国心」高揚のため、
生徒たちから竹槍で突きさされ、火あぶりに
されるという非業の死を遂げます…
アビゲイルを一番大切にしていた少女が、最後に教師から
無理やりに竹槍で突かされる場面は、
涙がこぼれそうです。
「私は貝になりたい」を思い出してしまいます。
こんな悲惨な人形の死って、あるでしょうか。
その少女は、アビゲイルの黒こげで手足ももげた最期を見て、
とうとう、ひと月後に亡くなります。
……
アビゲイルの無念が亡くなった少女の家系に
怨念のように漂い、それがようこの友達の家なのですが、
りかさんはアビゲイルを救うことができるのでしょうか。
ホラーよみものではけっしてないのですが、
市松人形の出てくる物語は、なぜか、少しコワイ。
山岸凉子の
「私の人形はよい人形」を思い出してしまいました。
人形が怖いのではなく、
人形を怖いものにしてしまった人の心が、
コワイのかもしれません…
ホラーじゃないです、くどいけど。
『西の魔女が死んだ』 につづいて、この本でも、
賢く聡い祖母と、そんな祖母を慕い、尊敬する孫娘が描かれています。
