ポール・ギャリコ 亀山龍樹 訳 ブッキング
ハリスおばさんシリーズ2作目。
作品が書かれたのは1960年ですが、まるで現代を予言しているみたい。
御年60歳のハリスおばさんのパワフルさ。児童遺棄・虐待に苦しむ男の子ヘンリー。
見所はいろいろあるのですが、ギャリコがそっと語りかける人生の智恵に、いつも胸を衝かれます。
人は欲張りだから、つい完全な幸福を求めてしまうけれども。すべてが手に入らないから不幸だと決めつける前に、
いまある幸せに充足することが、人生を楽しむ智恵なのだ、
と。
幸せになるためには、抱え切れないほどの花束ではなく、
一輪の花を飽かずながめて、その可憐さを慈しむココロがあればいいのだと、最近分かってきました。
シリーズものは第一作目がいちばんおもしろいものですが、とはいえ、登場人物たちが4作品を経て、次第に馴染みぶかい、慕わしい存在になっていくのも、また幸せの形です。