文藝春秋 2001年1月20日発行
これも、図書館から借りた本ですが。
学生時代、体育はつねに低空飛行で、
ペーパーテストにすべてを賭けていた菅たんですが、
最近、スポーツ関連の本を読むようになりました。
『山際淳司傑作集成』の近くにあって、
そういや、村上春樹さんのこういう本は
読んでなかったなーと思って。
小説は全部読んでいるんですけど。
エッセイもほとんど。
でも、この本はタイトルは知っていたんですが、
読む機会がなかった。だってスポーツに分類されているんですもん。
分類番号は、780.6.
スポーツの記録文、というところでしょうか。
てもとに分類法の本もないのでテキトーですけど。
シドニーオリンピックの記録なんですけど、
中心はマラソン。高橋尚子が優勝した大会ですもの。
アボリジニーのキャシー・フリーマンの400メートル決勝。
でも、この本の最後は、
有森裕子と犬伏孝行のふたりを取り上げている。
輝かしい勝利を、もちろん、村上春樹も評価し、愛する。
だが、二人のアスリートは私たちと同じように、
夢と野心をもち、高みを目指して歯を食いしばり、
そして私たちとおなじように、
弱みを持っていた、と。
印象的な言葉がいくつかあります。
「また一般論。勝ち続けているとき、勝つことはとても簡単であるように
思える。手を伸ばしさえすれば、勝利はいつもそこにある。
しかしいったん勝てなくなってしまうと、身をそいで骨を削っても、
どれだけ長く手を伸ばしても、勝利は遥か遠くにしかない。」
「言うまでもないことだけれど、この日常の中で、
僕らは地べたにへばりついて生き続けていかなくては
ならない。明日、明日、そしてまた明日。
僕らは闘い続け、ある場合には途方に暮れる。
でもひとつだけ確かなことがある。
もし競技者が闘争心を失ったら、
それは闘うのをやめることなのだ。
そういう意味では、オリンピック・ゲームは
僕らにとってのひとつの大がかりな
メタファーなのだ、ということも可能かもしれない。」
そして、このシドニー・オリンピックについて書かれた
分厚い本は、このように締めくくられている。
「僕らはこれからずっと別の場所で、
別のルールで走り続けることになる。僕にできるのは、
ただ、それぞれの幸運を祈ることだけだ。」
