…人間扱いをしてくれない看守が視察窓からのぞくと、白鳥は斜視の目をすえ、
「人間の作った房ですから、人間がやぶれぬはずはありませんよ。あたなの当直の
日に逃げてみましょうか」と、うすく笑ってみせる。(『逃げろ!世界脱獄・脱走物語』)
さきほど読み終わった『逃げろ!』ですが、やはり私の興味の一番は、脱獄。
小学校のころ、たぶん、多くの人が黒岩涙香翻案の『岩窟王』を読むと思うんですが、
そのころも、囚人の孤独とその独特な暮らしぶり、そして脱走劇に惹かれた。
魚の骨でペンをつくったり、ネズミたちと仲良くなったり。
この白鳥の脱獄のテクニックは凄い。
一回目の脱獄では、風呂上りの手のひらに鍵穴を強く圧し当てて
その形を写し取って鍵を作ったという。準備にも時間をかけ、足音から
看守の巡視の癖をおぼえた彼は、真夜中の看守の交替のとき、15分間
の空白が生じるときをうかがって、脱獄。
二回目は、床と三方の壁はコンクリートで固められた独房から、
ヤモリのように、手足をふんばって壁を這いあがって(3メートル!)
脱獄。
三回目は、さすがに警戒されて拘束具も頑丈になっているんだが、
手錠に看守の目を盗んで味噌汁を吹きかけ、視察窓の鉄枠にも、
テッポウウオのように味噌汁を吹きかけつづけて腐食させてしまった。
また、彼は肩関節を自由に外して入れるという特技があり、
それで相当狭い場所もくぐりぬけることができたという。
ところで、みなさんは『スケバン刑事』(和田慎二)って、読んだことはありますか?
私は当時斉藤由貴が好きでしたが、それでもあのドラマは耐え難かったです。
マンガとは別物なので、マンガはまだ読んでいないかた、ぜひご覧あれ~。
で、その中に、主人公麻宮サキが「地獄城」と呼ばれる女子少年院を脱走するときに、
「人間が作ったものを、人間が脱走できないわけがない」
という嘯くわけです。まんまと脱走するサキ。
それにしても、高圧電流が流されている鉄条網って、ほんとに少年院か。
その鉄条網を超えるために、巨大トランポリンを仲間たちに作らせて、
ムササビのようなパラシュートで、なぜか少年院のまわりの樹海に逃げ落ちたわけです。
樹海。いったいどんな少年院なんだ。その後、巨大蛇がいたり、ミミズ農場ができたり、
もうどんどこ変になっていく地獄城。ぜひ読んでみてね(-_☆)